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「泣くな道真」感想。「半沢直樹になりたきゃ勉強しなさい!」と心に活を入れた一冊。

 (ひょっとしたら道真さまはこの地でようやく、真に右大臣にふさわしいお方になられたのかもしれぬ――)
(本文引用)
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 読んだ瞬間、「これは平安時代の半沢直樹だなぁ」と思っていたが、そう思う人は多い様子。

 「泣くな道真は、平安時代版半沢直樹!」と書いている記事もチラホラ。
 そもそも「菅原道真=半沢直樹」と結びつけて捉える記事もあった。

 いやもうホント、本書は「平安時代版・半沢直樹」。
 しかも渡真利忍も森山君も大和田常務も白井亜希子(っぽい人)も登場。

 もし本書をドラマ化するのなら、ぜひ「半沢軍団」でキャストをそろえ、お正月に放送していただきたい(大ウケすると思う)。

 世の中、能力が高い人が順調に出世するとは限らない。

 
 能力が高すぎるがゆえに、邪魔者扱いされることも。
 そのうえ人格が高潔だと、ますます「不当人事」の憂き目にあうことも少なくない。

 しかしだからといって、「己を磨くのは無駄」ということには決してならない。

 「泣くな道真」を読めば、結局「己を磨いた人が勝つ」ということがよくわかる。
 倦まずたゆまず学びつづけ、真面目に生きる人だけが、心晴れやかな「本当に幸せな人生」にたどり着ける・・・本書は、そんなことを教えてくれるのだ。

 だから私は本書を読み、自分に活を入れた。

 「半沢直樹になりたきゃ勉強しなさい!」
 「スカッとした人生を送りたければ、とにかく学びつづけなさい!」と。

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直木賞は逃したけど名作!「火定」澤田瞳子

評価:★★★★★

「己のために行なったことはみな、己の命とともに消え失せる。じゃが、他人のためになしたことは、たとえ自らが死んでもその者とともにこの世に留まり、わしの生きた証となってくれよう」
(本文引用)
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 平成29年下半期の直木賞候補作。
 直木賞は門井慶喜さんの「銀河鉄道の父」が受賞しましたが、この「火定」も負けず劣らずの名作。

 「生きるとは何か」、「死とは何か」、そして「他人のために命を投げ打つとは何か」について、400ページ余りにわたり熱く、熱く書かれています。

 年齢的に、そろそろ他人のために時間を費やすことを考えていたので、心にしみました。
 
 一生のバイブルにしたい良書です!
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■「火定」あらすじ



 舞台は天平(奈良)時代の施薬院。
 
 貧しい者たちの病気やケガを治療する施設で、藤原氏の好感度アップに建てられました。

 ある日、施薬院の医師の前で、官人が顔を真っ赤にして倒れます。
 医師たちはただの風邪だろうと、官人を放っておきますが、徐々に同様に倒れる人が増えはじめます。
 
 倒れる人々の特徴は、高熱が出て、一気に下がり楽になった後、さらに劇症化し死に至ること。

 彼らは何と、恐るべし天然痘にかかっていたのです。

 京はパンデミック状態となり、死屍累々の地獄絵図に。

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 施薬院の医師たちは、感染の恐怖におびえながら、病に立ち向かっていきますが・・・?
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■「火定」感想



 疫病が流行し、パニックに陥る物語はよくあります。

 でもこの「火定」は、そこからもう一歩も二歩も踏み込んだもの。

 疫病を通して「人が生きる意味とは何か」を真摯に訴えます。
 奈良時代版「君たちはどう生きるか」とも言えます。

 見るに堪えない疱瘡、膿による臭気、立ち上がることもできず垂れ流された汚物・・・。
 そんな地獄以上の地獄を前にして、医師たちは自分に問い続けます。

 自分が助かるために、彼らを見殺しにするか。
 自分が死んでもいいから、彼らの治療をするか。

 どんなに手を尽くしても助かるかもわからない患者たち。
 そんな彼らのために命を投げ打つことは、果たして意義があるのかを、医師たちは自問しつづけるのです。

 その葛藤の様子は、読んでいて息ができなくなるほど辛いです。苦しいです。
 
 人のために生きることで、ある意味永遠の命が得られるということもできましょう。
 
 他人のために為したことは、自分が灰になっても他人から他人に受け継がれ、生き続けます。

 そう考えれば利他主義でいきたいところですが、果たして「ストレートに生命にかかわる事態で、それができるか」は難問。

 「火定」は医師たちの迷いや決意、怯え、邁進さまざまな心模様を描くことで、「君たちは他人のためにどこまで生きられるか、尽くせるか」を突きつけます。

 よって本書は「社会の役に立ちたい」「人を助けたい」という思いを強くお持ちの方におすすめ。

 人を助けるという仕事の「究極の姿」を通して、自分の信念や夢を再確認できますよ。

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 また本書は、全国レベルのパニックが起きたとき、どう対処すべきかも教えてくれます。
 
 病気に限らず、天災など「大きな不幸」に襲われると、人は「誰かのせい」にしたくなります。

 そこで標的になるのが、異分子。
 今でいうヘイトスピーチのような動きが、この物語ではしっかり描かれています。

 現代日本でも、いつパンデミックや大規模な災害に見舞われるかわかりません。
 本書は、その備えにもなる一冊。

 冷静さを欠き、罪のない誰かを憎み攻撃することが、いかに非効率的で救いのないことかが、よーくわかります。

 パニック時には「頭はクールに、ハートはホットに」することが大切。

 本書を読むと、何かが起きた時こそ、ゆっくり落ち着いて行動することが大切であると気づきますよ。

 奈良時代のパンデミックと、医師たちの奮闘・葛藤を「これでもか」と描ききった「火定」。

 「生きるとは何か」「死とは何か」について日頃からお考えの方に、心からおすすめの一冊です。

 自分なりの答えが、きっと見つけられますよ。

詳細情報・ご購入はこちら↓

若冲 澤田瞳子

 「若冲はんの絵は、わしら生きてる人の心と同じなんやないやろか」
(本文引用)
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 「難しいことを易しく、易しいことを深く、深いことを面白く」

 ノンフィクションでこれが揃っていると、心から「読んでよかった」と思える。
 しかしこの本を読み、小説でもこの要素が重要であることがわかった。

 江戸時代の天才画人・伊藤若冲の人生を描いた物語「若冲」
 歴史と芸術が交差する内容と重厚な表紙が、小難しい印象を与えるが、文体が柔らかくシンプルで驚くほど読みやすい。
 さらに、人の心の機微が非常に深く掘り下げられており、そのストーリー展開もなかなかエキサイティングでぐいぐい読ませる。


 本書を読み、「易しく、深く、面白く」がそろっていると、フィクション・ノンフィクション問わずこれほど豊潤な読書ができるのかと、認識を新たにした。間違いなく傑作だ。

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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