評価:★★★★★
私は、モリカゲ家が世界一のキラキラ共和国になれるように、精一杯がんばります。キラキラ共和国を、命がけで、守ります。(本文中、鳩子の手紙より引用)
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11月17日に、東京・二子玉川蔦屋家電で「キラキラ共和国」刊行記念イベントが開かれます。
詳しくはこちら→小川糸さん新刊発売記念トークイベント&サイン会 こんなに途轍もなく優しい小説が書けるなんて、小川糸さんてどんな方なんだろう・・・。
そんな思いをお持ちの方は、「キラキラ共和国」を片手に行かれてみてはいかがでしょうか。
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本書「キラキラ共和国」は「ツバキ文具店」の続編。
(「ツバキ文具店」のレビューは
こちら)
主人公の鳩子が、前作で知り合った男性と結婚し、新たな人生を歩んでいきます。
いきなり6才の女の子の母親となった鳩子。
母親を通り魔に殺された女の子の、継母となった鳩子。
突然妻を失った男性の、妻となった鳩子。
鳩子は夫と娘とともに、全ての悲しみも憎しみも受け入れ、キラキラ共和国を作ろうと決心。
その果てしなく優しい真摯な姿には、背筋が伸びるとともに涙が止まりません。
「泣ける小説を読みたい」
今、そう思っているならぜひ手に取っていただきたい一冊。
泣いて泣いて、気がついたら朝になっている。
そんな至福の読書タイムを過ごすことができますよ。
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■「キラキラ共和国」あらすじ
鳩子は、鎌倉で文具店と代筆屋を営んでいます。
代筆の依頼は本当にさまざま。
盲目の少年による、母への感謝の手紙、酒乱の夫への離縁状、新幹線のチケット代を返してもらうお願い等々。
なかでも鳩子が戸惑ったのは、離縁状とその返事。
ある女性が、鳩子に夫への離縁状を依頼しますが、その後、その夫が「離縁したくない」との手紙を依頼してくるのです。
かたや「離婚してほしい」、かたや「離婚してほしくない」。
鳩子は複雑な心境で、両方の手紙を丁寧に書いていきます。
そして今、鳩子には代書屋以外にも重要な役割があります。
それは妻・母としての役割。
鳩子は、「ツバキ文具店」で知り合ったQPちゃんの父・守景蜜朗と結婚したのです。
雨宮鳩子から守景鳩子になった鳩子は、時折戸惑いながらも、QPちゃんとミツローを幸せにしようと固く誓います。
そのためには、乗り越えなければならない壁が。
それはミツローさんの前妻であり、QPちゃんの実母である美雪さんの存在。
通り魔に突然殺された美雪さんのことを、鳩子はどう受け止め、家族を作っていくか。
鳩子は考えた末、天国の美雪に手紙をつづります。
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■「キラキラ共和国」感想
「キラキラ共和国」を読むと、自分がこうして生きているというだけで、何て幸せなことなのだろうと涙があふれてきます。
そして子どもに対し、心からこう思えます。
「もう何も望むまい。生まれてきてくれただけで、ありがとう」
それは本書が、親子・家族をテーマにしているからです。
たとえば一通目の依頼は、母親への手紙です。
依頼人は目の見えない少年で、鳩子のサポートで母への感謝を懸命につづります。
「おかあさんへ
いつも、おいしいお弁当を作ってくれて
どうもありがとう。
おかあさんが僕のおかあさんで、
よかったです。」
この手紙を皮切りに、本書は家族・親子にまつわる出来事や手紙が続々登場。
読めば読むほど、
「人間は生まれてきただけで、何物にも代えがたい価値がある。
だからこの世はキラキラ共和国でなければならない。
生きるのがつまらない、生きていたくない、生まれてこなければ良かったなんて思わせる世の中であっては、いけないんだ」
という思いがふくらみます。
先日、「死にたい」というツイートから何人もの貴い命が奪われた事件がありました。
被害者の方々には、いったい何があったのか。何に悩み、何に迷い、何に引き付けられてしまったのか。
被害者の方々およびご遺族の方の無念は、いかばかりかと胸が痛みます。
こんなことを言うのは軽はずみかもしれませんが、「キラキラ共和国」を読んだ時、私はこう思いました。
「皆がこの本を読んでいたら、凶行が行なわれることはなかったのに」
本書終盤、鳩子は、夫の前妻・美雪に思いを馳せます。
夫ミツローは鳩子に気を遣い、美雪の遺品を整理・処分しようとしますが、鳩子はそれを全力で阻止。
ミツローさんのためにも、娘のQPちゃんのためにも、そして自分自身のためにも、美雪のものは手元に置いておかなければならないと説得します。
美雪を失ってからの、ミツローとQPちゃんの悲しみ苦しみは、鳩子にとって想像を絶するものです。
だからこそ、鳩子は美雪を愛します。
会いたかったなぁ、美雪さんと会いたかったよ。
ミツローさんを抜きにして、友達になりたかったです。
ミツローさんをステキだと思う私達って、きっと、すごーく見る目があると思いません?
なぜ鳩子がここまで美雪を愛するかというと、それはミツローとQPちゃんという存在をまるごと愛することにつながるからです。
そして誓うのです。
モリカゲ家をキラキラ共和国にする、と。
本書を読んでいると、自分の生きる世界をキラキラにするのはお金や名誉ではないとわかります。
無名でもいい、特別な才能や知識がなくてもいい。
ただ、ひたすら生きている。
無心に生きている。
そんな人間同士が認めあい、愛しあうことが、最高の「キラキラ」特効薬なんじゃないか。
心からそう思えます。
もし今、自分の存在がつまらないとか、誰かに負けているようで悔しいとか、生きていても意味がないなんて思っていたら、どうかどうか、この本を手に取ってください。
つまらない人間なんて、この世に一人もいないこと。
たとえつまらない人間であったとしても、そんな「つまらない人間」を命がけで愛し、守ろうとする人が必ずいるということがわかります。
今は気づいていないかもしれませんが、すでに私たちは、キラキラ共和国のれっきとした住民。
1人ひとりが違う輝きを持つ、キラキラした存在なのです。
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