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「ライオンのおやつ」あらすじ感想。外で読めない号泣本。直木賞・本屋大賞同時候補も納得!

 端から端までクリームがぎっしり詰まったあのチョココロネみたいに、ちゃんと最後まで生きることが、今の私の目標だった。
(本文引用)
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 本書ほど「外で読むんじゃなかった・・・」と後悔した本はない。
 
 カフェで読んでいて、涙がボタボタボタボタ止まらなくなり、鼻水もグズグズに。
 マスクで何とかごまかしたものの、隣席の人はさぞかし不審に思ったことであろう。

 本書タイトルの「ライオン」とは、もう誰に襲われることもなく、寝て食べて、心安らかに過ごしていればいい、とされた人。

 つまり「死が確実に近づいている人」だ。

 「ライオンのおやつ」は、そんな「死が迫っている人たち」を描いた一冊。


 確実に身体が動かなくなるなか、彼らはいかにして「死の恐怖」に立ち向かうのか。
  「死への覚悟」と「生への未練」を行き来する思いを、どう整理していくのか。

 直木賞・本屋大賞ノミネートも納得の、心震える人生賛歌である。

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号泣保証付き!小川糸「キラキラ共和国」感想。刊行記念イベントもありますよ。

評価:★★★★★

私は、モリカゲ家が世界一のキラキラ共和国になれるように、精一杯がんばります。キラキラ共和国を、命がけで、守ります。
(本文中、鳩子の手紙より引用)
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 11月17日に、東京・二子玉川蔦屋家電で「キラキラ共和国」刊行記念イベントが開かれます。

詳しくはこちら→小川糸さん新刊発売記念トークイベント&サイン会

 こんなに途轍もなく優しい小説が書けるなんて、小川糸さんてどんな方なんだろう・・・。

 そんな思いをお持ちの方は、「キラキラ共和国」を片手に行かれてみてはいかがでしょうか。
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 本書「キラキラ共和国」は「ツバキ文具店」の続編。
(「ツバキ文具店」のレビューはこちら

 主人公の鳩子が、前作で知り合った男性と結婚し、新たな人生を歩んでいきます。

 いきなり6才の女の子の母親となった鳩子。

 母親を通り魔に殺された女の子の、継母となった鳩子。

 突然妻を失った男性の、妻となった鳩子。

 鳩子は夫と娘とともに、全ての悲しみも憎しみも受け入れ、キラキラ共和国を作ろうと決心。

 その果てしなく優しい真摯な姿には、背筋が伸びるとともに涙が止まりません。

 「泣ける小説を読みたい」
 今、そう思っているならぜひ手に取っていただきたい一冊。

 泣いて泣いて、気がついたら朝になっている。

 そんな至福の読書タイムを過ごすことができますよ。





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■「キラキラ共和国」あらすじ



 鳩子は、鎌倉で文具店と代筆屋を営んでいます。

 代筆の依頼は本当にさまざま。

 盲目の少年による、母への感謝の手紙、酒乱の夫への離縁状、新幹線のチケット代を返してもらうお願い等々。

 なかでも鳩子が戸惑ったのは、離縁状とその返事。

 ある女性が、鳩子に夫への離縁状を依頼しますが、その後、その夫が「離縁したくない」との手紙を依頼してくるのです。

 かたや「離婚してほしい」、かたや「離婚してほしくない」。

 鳩子は複雑な心境で、両方の手紙を丁寧に書いていきます。

 そして今、鳩子には代書屋以外にも重要な役割があります。

 それは妻・母としての役割。

 鳩子は、「ツバキ文具店」で知り合ったQPちゃんの父・守景蜜朗と結婚したのです。

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 雨宮鳩子から守景鳩子になった鳩子は、時折戸惑いながらも、QPちゃんとミツローを幸せにしようと固く誓います。

 そのためには、乗り越えなければならない壁が。

 それはミツローさんの前妻であり、QPちゃんの実母である美雪さんの存在。

 通り魔に突然殺された美雪さんのことを、鳩子はどう受け止め、家族を作っていくか。

 鳩子は考えた末、天国の美雪に手紙をつづります。
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■「キラキラ共和国」感想



 「キラキラ共和国」を読むと、自分がこうして生きているというだけで、何て幸せなことなのだろうと涙があふれてきます。

 そして子どもに対し、心からこう思えます。

 「もう何も望むまい。生まれてきてくれただけで、ありがとう」

 それは本書が、親子・家族をテーマにしているからです。

 たとえば一通目の依頼は、母親への手紙です。

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 依頼人は目の見えない少年で、鳩子のサポートで母への感謝を懸命につづります。

 「おかあさんへ
 いつも、おいしいお弁当を作ってくれて
 どうもありがとう。

 おかあさんが僕のおかあさんで、
 よかったです。」

 この手紙を皮切りに、本書は家族・親子にまつわる出来事や手紙が続々登場。

 読めば読むほど、

 「人間は生まれてきただけで、何物にも代えがたい価値がある。
 だからこの世はキラキラ共和国でなければならない。
 生きるのがつまらない、生きていたくない、生まれてこなければ良かったなんて思わせる世の中であっては、いけないんだ」

 という思いがふくらみます。

 先日、「死にたい」というツイートから何人もの貴い命が奪われた事件がありました。

 被害者の方々には、いったい何があったのか。何に悩み、何に迷い、何に引き付けられてしまったのか。
 被害者の方々およびご遺族の方の無念は、いかばかりかと胸が痛みます。

 こんなことを言うのは軽はずみかもしれませんが、「キラキラ共和国」を読んだ時、私はこう思いました。

 「皆がこの本を読んでいたら、凶行が行なわれることはなかったのに」

 本書終盤、鳩子は、夫の前妻・美雪に思いを馳せます。
 夫ミツローは鳩子に気を遣い、美雪の遺品を整理・処分しようとしますが、鳩子はそれを全力で阻止。
 
 ミツローさんのためにも、娘のQPちゃんのためにも、そして自分自身のためにも、美雪のものは手元に置いておかなければならないと説得します。

 美雪を失ってからの、ミツローとQPちゃんの悲しみ苦しみは、鳩子にとって想像を絶するものです。
 
 だからこそ、鳩子は美雪を愛します。 

会いたかったなぁ、美雪さんと会いたかったよ。
ミツローさんを抜きにして、友達になりたかったです。

 

ミツローさんをステキだと思う私達って、きっと、すごーく見る目があると思いません?

 なぜ鳩子がここまで美雪を愛するかというと、それはミツローとQPちゃんという存在をまるごと愛することにつながるからです。

 そして誓うのです。

 モリカゲ家をキラキラ共和国にする、と。

 本書を読んでいると、自分の生きる世界をキラキラにするのはお金や名誉ではないとわかります。

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 無名でもいい、特別な才能や知識がなくてもいい。
 
 ただ、ひたすら生きている。
 無心に生きている。

 そんな人間同士が認めあい、愛しあうことが、最高の「キラキラ」特効薬なんじゃないか。

 心からそう思えます。

 もし今、自分の存在がつまらないとか、誰かに負けているようで悔しいとか、生きていても意味がないなんて思っていたら、どうかどうか、この本を手に取ってください。

 つまらない人間なんて、この世に一人もいないこと。
 たとえつまらない人間であったとしても、そんな「つまらない人間」を命がけで愛し、守ろうとする人が必ずいるということがわかります。

 今は気づいていないかもしれませんが、すでに私たちは、キラキラ共和国のれっきとした住民。

 1人ひとりが違う輝きを持つ、キラキラした存在なのです。

詳細情報・ご購入はこちら↓

とびきり心温まる小説「ツバキ文具店」感想。これを読めば、お悔やみ・絶縁・天国からの手紙まで書けます。

評価:★★★★★

  「私は、確かに代書屋です。頼まれれば、なんだって書く仕事をしてますよ。でも、それは困っている人を助けるためです。その人が、幸せになってほしいからです。でもあなたは、ただ甘えているだけじゃないですか」
(本文引用)
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 現在、多部未華子さん主演でドラマ放送中の「ツバキ文具店」。
 本屋大賞にもノミネートされ、今、「心温まる小説」No.1とも言われています。

 そして実際に読んでみると、これが心が温まるなんてもんじゃない!

 「ツバキ文具店」を読むと心が温まるだけでなく、人生がとてつもなくキラキラと輝いて見えてきます。
 いえ、人生だけでなく、自分が死んだ後の世界まで生き生きと見えてくるんだから、すごい。
 「ツバキ文具店」を読み、改めて、後々まで文字として残る「小説」というものの力を感じました。



 「ツバキ文具店」のドラマをご覧の方は、ぜひ小説もお手に取ってみてください。
 文章でしか味わえない、文字でしか伝わらないものが、この本には間違いなくあります。

 では、「ツバキ文具店」のあらすじと感想を書いていきますね。
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 ツバキ文具店は、鎌倉に店を構える文房具店。
 現在、雨宮鳩子という若い女性が切り盛りしています。

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 ツバキ文具店の特徴は文房具を売るだけでなく、代書も引き受けていること。
 これは江戸時代、雨宮家がお城の右筆を勤めていたため、代々引き継がれている仕事です。

 そのため鳩子は幼少期から、祖母に文字の書き方を叩きこまれます。
 そんな生活に嫌気がさし、鳩子は一時期非行に走りますが、今ではすっかり落ち着き、立派な代書を務めることに。

 先代から教え込まれた「美しい文字」と「手紙の作法」を駆使して、様々な手紙の代筆をします。

 持ち込まれる依頼も実にさまざま。
 恋文やお見舞い状はもちろんのこと、絶縁状やペットの死亡報告、お金の無心を断る手紙まで、鳩子はたくみに書きあげます。

 そんな手紙の達人・鳩子が、最後に手にした手紙とは・・・?
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 まず「ツバキ文具店」を読むと、無性に手紙が書きたくなります。

 メールではなく、あくまで「手紙」です。

 たとえかな釘流でもいいから、自分の手で文字を綴って、大切な人に手紙を書きたくてたまらなくなります。
 手紙が、こんなに素敵なコミュニケーションツールだとは!

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 実はこの本には、実際に鳩子が書いた手書きの手紙が掲載されています。
 それも通り一遍ではなく、依頼主や手紙の内容に合わせて、文字や文体が巧みに変えられた見事なもの!
 この手紙の数々が、本当に読んでいて楽しいですし、癒されます。

 「お悔やみの手紙をこんな風に書けば、悲しみが少しでもやわらぎそう」
 「今度入院する友だちに、こんなカードを添えたら素敵だな・・・」

 鳩子の臨機応変ぶりと情の深さから編み出される手紙は、実生活でも役に立ちそうなものばかり。

 便箋や封筒、切手の選び方まで細かく描かれているのもポイント。
 読んでいるだけで、オシャレな文房具店か雑貨屋さんにショッピングに来ている気分になれます。

 なかでも夢中になって読んでしまったのが、離婚報告の手紙を書くエピソード。

 ある男性は、15年間連れ添った妻と離婚をすることになります。
 そこでこのたび、結婚式に来てくれた方々に、その報告の手紙を出すことに。
 その手紙の代書を鳩子に依頼します。

 男性の妻は、すでに家を出て、新しい伴侶とともに新生活を始めたとのこと。
 離婚の原因は明らかに妻の不貞にありますが、男性は決して妻を悪く言うことなく、静謐な態度で鳩子に代書を頼みます。

 鳩子はその希望をまっすぐに受け止め、文面はもちろん便箋、封筒、そして封をするシーリングワックスまで細かく細かく配慮し、離婚報告の手紙を書き投函するのです。



 「ツバキ文具店」には、多種多様な温かい手紙が登場しますが、私はこの「離婚報告」の手紙がいちばん好きです(私が離婚をしたいからではありませんよ、念のため)。

 相手をいくら責めてもおかしくない事情なのに、自分の幸せを祈る以上に相手の幸せを祈り、そして手紙を送った相手の気持ちをも思いやる。

 ネガティブだらけの状況のなかで、これほどまでに晴れやかな気持ちにさせる手紙が書けるものなのかと、ただただ感心、感動しました。

 文字の力って、文章の力って偉大ですね。

 依頼人と鳩子、そして「小説家・小川糸さん」の人間力に心から脱帽です。

 最後に、本書を読み終えてもすぐにはページを閉じないで!

 幻冬舎さんからの粋な一言が、物語終了後に添えられています。

 小説「ツバキ文具店」で、文字と文章がどれほど人を強く優しく明るくするかを、ぜひご堪能ください。

詳細情報・ご購入はこちら↓


プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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