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「雲を紡ぐ」あらすじ・感想。親子げんか防止に必読!こんな言葉が子を追い詰める。

「自分はどんな『好き』でできているのか探して、身体の中も外もそれで満たしてみろ」
(本文引用)
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 突然の学校休校。
 わが家も該当しており、子どもは学校から大量の荷物を抱えて帰宅。
 
 「症状の軽い若年層が、気づかないうちに感染拡大を助長してしまう」と聞けば、家で静かに過ごすのが、せめてもの責務であろう。

 とはいえ、反抗期真っ最中のわが子。
 親子一緒にいる時間が長いと、つまらないことでケンカも起きがち。

 加えて「休校」ということで生活習慣が乱れ、つい「早く寝なさい」「もうゲームは終わり!」などあれこれ口を出してしまう。

 時おり、みっともないほどヒステリックに怒ってしまい、子どもに諭されることも。
 我ながら情けない・・・実に情けない。

 
 そんな私を救ったのが、今回紹介する「雲を紡ぐ」。
 
 子どもに声を荒らげそうになる瞬間、本書の場面が脳裏によみがえると、怒りがスーッと消えていく。

 「雲を紡ぐ」を読んでいなかったら、親として、人として、どれだけ恥ずかしいことをしてしまったことか。
 想像するだけで戦慄する。

 休校で、親子ゲンカが増えそうな人、すでにイライラが貯まってきている人、とり急ぎ「雲を紡ぐ」を読んでみてはいかがだろうか。
 
 昼食の準備など色々大変なことと思うが、その合間に、ぜひ読んでみてほしい。

 今回の異例の事態が、あなたのお子さんにとって、非常に価値ある時間となるだろう。

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直木賞候補作「彼方の友へ」(伊吹有喜)は命の洗濯になる上質な一冊!

評価:★★★★★

 「お宅では読者をこう呼ぶんでしたね。『友』と」
(本文引用)
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 最近、注目している伊吹有喜さん。
 本作「彼方の友へ」は直木賞候補作ということで、手に取りました。

 「ああ、やっぱり伊吹さんの小説はいい」

 心の底からジンワリと、そう思わせてくれる小説でした。

 伊吹有喜さんの小説で、かつて優しさや元気をもらった人。
 伊吹有喜さんは知らないけれど、「よーっし!新しい年の始まりだ。頑張るぞ!」と気合を入れたい人に本書はおすすめ。

 新年、明るい気持ちで滑り出したい方すべてに「読んでみて!」と言いたい一冊です。




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■「彼方の友へ」あらすじ



 主人公の佐倉ハツは、現在老人ホームに入居しています。

 ある日、ハツの手元にカードの贈り物が届きます。

 それは昔、ハツが編集していた「乙女の友」の附録でした。

 その瞬間、ハツの心はタイムスリップ。

 雑誌作りに情熱を傾けた日々、男だらけの職場で奮闘したこと、学歴がないために恥じ、苦しんだこと、そして心から愛し尊敬できる人と出会ったことを思い出します。

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■「彼方の友へ」感想



 「彼方の友へ」は、主に昭和初期が舞台なので、言葉遣いがちょっぴり古めかしいです。

 特に本書は雑誌作りを描いているだけあり、登場人物1人ひとりの言葉がとにかく丁寧で律儀。
 若い人にとっては、まどろっこしさを感じてしまうかもしれません。

 でも、そこをグッとこらえて読んでみてください。

 話す言葉、書く言葉、読む言葉に心をこめ、花を温めるようにコミュニケーションをとることが、いかに心を豊かにするかに気づきます。

 貧富の差や学歴の差別、男尊女卑が跋扈している時代。
 ハツをはじめとする女性陣は、口にするのも辛い出来事がしばしば立ちはだかります。

 でも彼女たちと、彼女を守る良識ある男性陣は、どんなに失礼なことを言われようと背筋を伸ばし、美しい言葉でゆったりと返します。

 ぶれる人間(=失礼な言葉を浴びせる人間)は、ぶれない人間に勝つことはできないと言います。

 「乙女の友」の編集者たちを見ていると、まさに「ぶれない人間は最高に強く、最高に美しい」ということを確信でき、スカッとします!

 それにしても、なぜ彼らはそこまで「人としての強さ・美しさ」を保つことができたのでしょうか。

 それは全国の「友」に、最上のものを届けるという信念があったからです。

 「乙女の友」を待っている、全国の「友」に幸せと歓びを運ぶ。

 何が何でも「友」を守り、「友」を大切にする並々ならぬ情熱が、一本筋の通った「彼らの姿勢」を支えていたのです。

 恋愛に限らず、誰かを本当に愛することは、どこまでも人を強く美しくするんですね。

 本書を読み、改めてわかりました。

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 あとそうそう、「彼方の友へ」を読むと、本や雑誌がとてつもなく愛おしく思えてきますよ。

 1ページ1ページが、われわれ読者=「友」に向けて作られたものだと思うと、涙が出てくるほど。

 本好き、雑誌好きという方は必読の小説です。

 心洗われる読書がしたい方、本や雑誌が大好きな活字中毒気味の方に、「彼方の友へ」は全力でおすすめ!
 書籍の見方がガラリと変わってきますよ。

 もしかすると捨てられなくなって、家中が本だらけ・雑誌だらけになっちゃうかも・・・。


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2018年1月公開!映画「ミッドナイト・バス」の原作は、読む人を朝へ運んでくれる名作!

評価:★★★★★

「暗がりは抜けたんだよ。たった一人で、もう走ってこなくていいんだ」
(本文引用)
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 2018年1月から公開される映画「ミッドナイト・バス」原作。
 この映画、キャスティングが見事です!

 主演が原田泰造さんで、別れた奥様役が山本未來さん、現在の恋人役が小西真奈美さんなのですが、どれも「ピッタリ~!」と悶絶してしまいました。

 今、注目の女優・葵わかなさんも出演されるとか。

 公開されたら、ぜひ観たいです。

 この「ミッドナイト・バス」は山本周五郎賞と直木賞の候補となった小説。



 受賞は逃したものの、1人ひとりの人間が持つ強さと弱さ、優しさと残酷さという二面性が情感たっぷりに描かれていて、「ああ、人間ってこうかもしれないなあ。だから人間って人生って面白いのかもしれないな」としみじみと読みふけりました。
 でも、こうも思うのです。

 人間がもつ真実がたった1つなら、どんなに楽に簡単に生きられるだろうって。

 誰が人間をこんなに複雑にしてしまったのだろう。辛いのに!なんて、ちょっと地団駄ふんでしまいました。

 そう思わせるほど、この「ミッドナイト・バス」が面白かったということ。

 人生ってなかなかうまくいかないし、暗い道ばかりのような気がするけれど、深夜バスのようにとにかく前に進むよりほかないんですね。
 朝が来ても来なくても歩き続けていれば、漆黒の空が濃紺になり、やがて白み始めてくるだろう・・・。

 そんなことを信じさせてくれる小説でした。
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■「ミッドナイト・バス」あらすじ



 主人公の高宮利一は深夜バスの運転手。

 成人した息子と娘がいます。

 妻・美雪とは16年前に離婚。
 利一の母親にさんざん泣かされ、家を飛び出していったのです。

 ある日、利一が担当するバスに美雪が乗車。
 利一は若い恋人がいながらも、元妻との再会に心を揺らします。

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 一方、息子と娘も人生につまずいている様子。
 特に息子はアレルギー性の湿疹が悪化し、背中が血だらけに。

 心に何か、深い悩みを抱えているようです。

 利一と美雪、恋人の志穂、そして息子と娘・・・一度壊れてしまった彼らは、もう一度元に戻ることはできるのでしょうか。

「どうして僕らはもっと早く・・・・・・ばらばらになる前に、うまく立ち回れなかったんだろうね」

 彼らは、人生のミッドナイト・バスから抜け出すことが果たしてできるのか・・・。
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■「ミッドナイト・バス」感想



 この小説は、「自分がマイノリティかもしれない、異端かもしれない」と悩んでいる方におすすめです。

 たとえば家庭環境が所謂「普通」と違っていたり、恋愛や結婚、出産の形が「普通」と違っていたり。

 人間、ライフスタイルやライフステージが少しでも規格からはずれていると、ついコンプレックスを抱きがちです。

 でもこの小説は、そんな方々を日の光の下に運んでくれます。

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 一見、世の中のほとんどの人は「普通」で「常識的」な家庭を作っているように見えます。

 でも本書を読むと、「普通で常識的な」家庭なんてまず存在しないことがわかります。

 そして、自分が普通で常識的な家庭を思っている人間ほど残酷であることも。

 たとえば本書で印象的なのが、利一の娘・彩菜の結婚話。

 彩菜の恋人は、自分の家庭を普通で常識的と信じて疑わない青年。
 彩菜が男手ひとつで育てられたことと、実母を憎んでいることを全て受け止めて彩菜を愛しますが、そこにはどこか真剣味が感じられません。

 「普通で常識的(と自分では思っている)な彼は、異端であることにコンプレックスを抱いている人に対し、あまりにも鈍感です。

 一方で、「自分を異端である」と思い悩む人は、異端である人に対し寛容であり、結果、周囲の人の心を救います。

 異端でありマイノリティであることは、それだけ雄大で優しい人間になれる・・・「ミッドナイト・バス」はそんなことを優しく包み込むように、諭してくれるんす。

 自分を異常であると悩む人は、人生の深夜バスに乗っているような気になるかもしれません。

 社会に適合できないと、自分以外は皆、太陽の光の下を歩いているように見えるかもしれません。

 でも、本書を読めば、必ず夜は明けると信じることができますし、朝になるまで歩きつづける元気がわいてくることでしょう。

忘れない。初めての人、初めての夫。
私の人生が夜のとき、明け方まで運んでくれた人。

 この途轍もなく優しい物語は、読む人皆を明け方まで運んでくれます。

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伊吹有喜「カンパニー」。映像化の際にはぜひ「三代目」を!

評価:★★★★★

 「『努力、助熱、仲間』。この三つがそろえば無敵って」
(本文引用)
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 ネットのレビューにもありますが、この小説は本当に映像化してほしい!
 
 主人公・青柳は西島秀俊さん、高野役は宮尾俊太郎さん、那由多役は岩田剛典さん…等々、妄想がふくらんでしまいます。
 
「カンパニー」の映像化が実現したら、世界を代表するミュージカル映画になりそうなんだけどな~(「ラ・ラ・ランド」みたいな)。
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「カンパニー」 あらすじ



 青柳誠一は、製薬会社に勤める実直なサラリーマン。

 ある日、青柳はバレエ団に出向するよう命じられます。



 そこでバレエ公演を成功させないと、サラリーマン生命を絶たれる恐れも。
 私生活では妻子に出ていかれ、仕事もうまくいかない青柳は、自殺まで考えるようになってしまいます。

 しかし生来真面目で責任感の強い青柳は、バレエ公演を成功させることに腐心。

 スポーツトレーナーの瀬川由衣とタッグを組み、舞台成功に向けて奔走します。

 スターダンサーの故障、ダンサー同士のぶつかり合い、本番での思わぬハプニング。

 次から次に襲ってくる困難を、青柳は乗り越えることができるのか!?

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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