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遠田潤子「オブリヴィオン」で、完全に遠田潤子ファンになりました。

評価:★★★★★

 やり直すのは辛い。まず、これまでの自分はクズだったと認めなければならない。これまでの人生、自分が言ったこと、決めたこと、逃げたこと、甘えたこと、人を傷つけたこと、すべてに不良品のハンコを押さなくてはならない。
(本文引用)
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 「オブリヴィオン」で、完全に遠田潤子ファンになりました。
 とにかく読んでも読んでも、ハズレなし。

 途轍もなくダークな世界・・・はっきり言って反吐が出そうな世界を描いているのに、どっぷりと引き込まれ一気に読んでしまいます。

 遠田作品の魅力は、絶望と希望の絶妙なバランス。

 遠田潤子さんの小説を読んでいると、「ああ、小説って絶望だけでも希望だけでもダメなんだな。絶望と希望が黄金比でミックスされてやっと、小説って面白くなるんだな」ということがよ~くわかります。



 グロテスクぎりぎりのところまで絶望を描き切り、「もうダメ!辛くて読めない!」というところでスッと希望の光をさす遠田ワールド。

 だから遠田作品は、どんなダークでディープな世界でも、読むのが楽しくて仕方がない!
 続きが気になって気になって、ノンストップで読んでしまいます。
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■「オブリヴィオン」あらすじ



 主人公の吉川森二は、妻を殺害した罪で4年間服役します。

 しかし森二は事件当時、そんな事件を犯すはずのない状況でした。

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 実は森二は、人生をやり直していたところ。
 ギャンブル中毒の父親と、その筋の世界で生きる兄・光一とは絶縁。

 勉学に励んで進学し、優しく真面目な女性と結婚し、子どもをもうけるという順風満帆な人生を歩んきました。

 しかし幸せの絶頂の最中、森二は妻を殺害。

 いったい森二夫妻に、何があったのか・・・?
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■「オブリヴィオン」感想



 本書を読んで思うのは、次の2つです。

 「どんな世界にもクズはいる」
 「どんな世界にも神はいる」

 地べたをはいつくばるような世界で、希望が全く見えない状況のなかでも、人生の幕を開ける人がいる。開けてくれる人がいる。
 一方で、人生の幕を開けようとする人を、身勝手な理由で引きずりおろそうとする人もいる。

 その「クズ」と「神」のコントラストが、「オブリヴィオン」の面白さです。
 (クズ、クズ・・・って、何だかひどい言い方になってしまいますが、はっきり言ってこの小説に出てくる悪党は「クズ」としか言いようがないので悪しからず)

 人生を一からやり直そうとする森二、それを何かにつけて妨害しようとする兄と舎弟。
 そして、大きな挫折を味わった森二を、さらに追い詰めようとする、勤め先の社長の息子・・・。
 
 人間とは、妬み嫉みにとらわれるとこうも醜くなるのかと、正視できない思いで読みました。

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 そんな「絶望に告ぐ絶望」から浮き上がる、意外な真実。
 何もかもが霧が晴れたようにわかった瞬間から、徐々に森二の人生に光が射しはじめます。

 う~ん、「オブリヴィオン」はずばり「絶望と希望のパフェ」ですね。

 絶望のアイスクリームやドロドロの生クリーム、濃厚なスポンジなどを食べ続けていたら、だんだん絶望がフレーク状に割れてきて、最後に宝物が出てくる感じ。

 絶望の底に追い落とすクズと、絶望からすくい上げる神とを、一瞬も手を抜くことなく濃厚に描くと、こんなに美味し~いパフェが食べられちゃうんだな~なんて感動しています。

 本書の帯に「すごいな 遠田潤子」というコピーが載っていますが、小説としてのパーフェクトぶりは、確かにそうとしか言いようがないかも。
 「すごいな 遠田潤子」と、私からも言わせていただきます。

 本書ですっかり遠田潤子ファンになったので、まだまだ読んでいくつもり。
 
 過去の書籍を読みながら、また新たなる遠田ワールドの発売を待ちわびたいと思います。

詳細情報・ご購入はこちら↓

遠田潤子の新刊「冬雷」。思いっ切りダウナーになりたければ遠田潤子が絶対おすすめ!

評価:★★★★★

  「僕は怪魚になりたい。怪魚になって町の人を喰い殺したい。皆殺しにしてやりたい」
(本文引用)
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 読書で思いっきり暗い気持ちになりたければ、遠田潤子が絶対おすすめ。

 人間の欲、愚かさ、身勝手さ、そしてそれに伴う怨念を書かせたら、遠田潤子さんは天下一です。

 「雪の鉄樹」も、読んでいて相当心がやられましたが、新刊「冬雷」も負けてはいません。
 
 幼い子どもの失踪事件を通して、人々の虚飾が浮き彫りになり、そこから強い恨みが噴出。

「町の人を喰い殺したい」

 何が主人公にそこまで言わせるのか。
 二転三転四転する事件の真相から見えてくる、人々の愚かすぎる本性に目まいがしてきますよ。
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「冬雷」 あらすじ



 主人公の代助は、赤ん坊の頃に親に捨てられ施設で育ちます。

 なかなか養子の話が来ないなか、小5の時にようやく親となってくれる人が登場。

 しかしその家は、代々塩業を生業とする地域一の名家。
 代助は名家の跡取りとして、徹底的に躾けられます。

 そんな代助の心のよすがは、同級生の真琴。





 真琴は、代助の家と縁の深い宮司の娘で、代助と真琴は名家の子として特別な存在として見られます。

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「雪の鉄樹」遠田潤子  感想

評価:★★★★★

  「普通なら最低の人間に向かって、あんたは最低です、なんてわざわざ口にせん。黙って縁を切るだけや。それを言ってくれたんは、ほんまにあんたのことを思ってくれてるからや。そのことだけはわかっとき」
(本文引用)
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 何年かに一度、小説を読んで押しつぶされそうな思いになる。登場人物の罪の重さや、人間性の汚さと崇高さ、辛酸な人生、それを補って余りある幸福・・・それらが全てのしかかってきて、息ができなくなる。
 「本の雑誌」が選ぶ「2016年文庫第1位」に輝いた「雪の鉄樹」。それは、そんな小説だった。

 主人公の曽我雅雪は腕のいい庭師で、口コミで顧客を広げている。
 人柄も良く、20歳の頃から13年間、遼平という少年の世話をしつづけている。遼平には両親がなく、肉親は祖母一人だ。

 その背景には、あまりに凄絶な過去があった。
 雅雪の祖父と父は女性をとっかえひっかえしては家に連れ込む男で、曽我家は「たらしの家系」と噂される。それだけに怨恨トラブルが多く、雅雪も幼い頃からそのとばっちりを受けていた。



 雅雪が遼平の面倒を見続けているのも、それが理由だ。ただしそのきっかけとなった“トラブル”は、他のものとはレベルが違う。多くの人の人生を、完膚なきまでにズタズタにするものだった。

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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