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「パレートの誤算」あらすじ感想。正義のケースワーカーはなぜ殺された!?意外すぎる真犯人に妙に納得。

 「言うなれば、生保は自分の力で生きていけない人の-社会的弱者と呼ばれている人たちの最後の命綱だ。その命綱を、悪用する奴らを俺は許せない」
(本文引用)
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 3月からドラマ放送される「パレートの誤算」。
 
 読めば思わず「さっすが柚月裕子!」と言いたくなる。

 揺るぎない正義感、ギリギリまで犯人がわからない展開に、一気読み必至の傑作だ。

 役所のケースワーカー・山川が、火事の焼け跡から死体で発見。
 しかし山川は火事の前に、殺されていたことが発覚。

 誰よりも熱心で、誰よりも社会的弱者に寄り添っていた山川が、なぜ殺されたのか。

 聡美、小野寺ら同僚たちが真相究明に乗り出すが・・・? 


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「あしたの君へ」感想。柚月裕子がベストセラー作家である秘密が詰まった一冊。

 「君は人に頼ることを、覚えなければだめだ。そうしなければ、君はずっとこのままだ」
(本文引用)
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 柚月裕子は「作家界のカレーライス」か「鶏の唐揚げ」。
 なぜなら、「みんな大好き!」だから。

 どれを読んでも間違いなく夢中になれる。
 どれを読んでも間違いなく、心に温かいものが広がり、いつまでも残っていく。

 もはや「巨人・大鵬・卵焼き」に「柚月裕子」と付け加えても良いのではないかと、本気で思ってます。(たとえが古くてすみません)

 そんな「日本の正義・柚月裕子」を最も象徴するのが、「あしたの君へ」。


 文庫版が「発売5日で重版」という人気作ですが、いったいどんな物語なのでしょうか。

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「蟻の菜園」感想。映像不可ミステリーの傑作!完璧なアリバイにひそむ奇想天外なトリックとは?

評価:★★★★★

「ああするより、どうしようもなかったんや! 誰もあの子らを守ってやれんかった」
(本文引用)
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 「蟻の菜園」は映像不可ミステリーの傑作。

 映画やドラマで観ることは(たぶん)できない。
 「文字だけ」だから実現できる、ミステリーの超絶技巧を味わえる一冊だ。
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 主人公の今林由美は、フリーライター。
 記事のネタを探すなか、由美はある事件と出会う。

 それは連続殺人事件。

 被害者は老齢の男性ばかり。
 彼らは皆、一人の女性と婚活サイトで知り合い、金を搾り取られた挙げ句、殺された。
 つまり婚活詐欺殺人、ということだ。


 容疑者の円藤冬香は容疑を否認。
 冬香には犯行当日、完璧なアリバイがあった。

 さらに冬香は、美貌も完璧。
 わざわざ詐欺などしなくても、さっさとエリート男性と結婚できそうだ。

 由美は円藤冬香に興味を抱き、彼女の人生を追うことに。
 
 そこには由美の想像をはるかに上回る、壮絶な人生と、奇想天外なトリックが隠されていた。

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「検事の信義」感想。待ちに待った佐方貞人シリーズ最新刊!「いい裁判だった」と言わせた裁きとは?

評価:★★★★★

 「裁判は私のためにあるのではありません。罪をまっとうに裁くためにあるのです」
(本文引用)
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 首を長~くして待っていた、佐方貞人シリーズ最新刊!
 本シリーズは全て読んでいるが、一話一話全てが未だに走馬灯のように心をよぎる。

 見事な謎解きにうなり、佐方貞人の信念に涙、涙・・・。
 ミステリーでここまで、頭も胸もカァッと熱くなる小説はない。

 ああ、いつか佐方貞人ファンで集まって、朝まで「あの話、良かったよね~」「これも好きだった!」なんて語り合いたいものである。

 今回も佐方貞人が、検事生命をかけて真実をとことん追求。
 事務官の増田や上司の筒井も、「佐方さんについていきます」度がますますヒートアップ。
 最後には、敵にまわした検事に「いい裁判だった」と言われることに・・・。

 
 さて本作「検事の信義」では、どんな事件が起こるのか。
 そしてどんな真相が掘り起こされるのか。

 ゴールデンウイークのお供にも、ぜひおすすめしたい一冊だ。

(※佐方貞人シリーズレビューはこちら↓

「最後の証人」 ●「検事の本懐」 ●「検事の死命」

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■「検事の信義」あらすじ


 本書は四話から成る短編集。
 
 第一話は窃盗事件。
 ある資産家の家から高級時計が盗まれ、芳賀という男が逮捕・起訴される。
 しかし調べを進めた結果、芳賀は無実と判明。
 事前に、資産家の主人から時計を譲り受けていたことがわかる。

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 あっさりと無実とわかった事件にも関わらず、なぜ芳賀は起訴されたのか。
 実はそれは全て、芳賀の画策。
 芳賀にしかわからない、ある思いが起こした裁判だったのだ。
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■「検事の信義」感想



 リーガルサスペンスが面白いのは、「正義は勝つ!」を信じられるからだ。
 この佐方貞人シリーズは「正義は勝つ!」の究極形。
 
 どんなに自分の立場が危うくなろうと、明日路頭に迷おうと、絶対に真実を逃さない。
 独特の洞察力と嗅覚で、誰も気づかぬ「事件の穴」から真相を手繰り寄せる様は、相も変わらず圧巻だ。

 今回も全話もらさず面白かったが、特に良かったのが「あらすじ」で紹介した第一話「裁きを望む」と、最終話「信義を守る」。
 
 特に「信義を守る」は、最後の最後まで真相が見えずハラハラしどおし。

 主人公は、認知症の母を殺し、自首した男。
 あっさり起訴事実が認められ、あとは判決を待つばかりだったが、そこに佐方が待ったをかける。

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 しかし被告の担当検事は、佐方の上にあたる人物。
 彼の判断を覆す行動をすれば、即、検事としての立場が危うくなる。

 だが佐方は、どうにも被告の行動が解せない。

 母親殺害後の、被告の妙な行動。
 そして被告の言動と、被告の周囲が語る人物像との乖離。

 佐方は検事生命を賭けて、事件の真相を暴いていくが・・・?

 この事件では、佐方の人並外れた考察力・観察力が一気に爆発。
 また佐方の信念の硬さが、存分に語られている。
 
 「柚月裕子の佐方貞人シリーズって、どんなシリーズなんだろう?」
 「どうして人気があるんだろう?」
 
 そんな疑問をお持ちなら、この「信義を守る」を読んでみてほしい。
 第一話「裁きを望む」もおすすめだ。
 
 検事としての手腕と、人間力がさらにパワーアップした佐方貞人。
 再会したばかりなのに、もう次に会うのが楽しみで仕方がない。

 ずっと追いかけていきたい傑作シリーズである。
                                                                     
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こちらもぜひ!↓
  

「最後の証人」感想。だまされて泣けるミステリー小説のフルコース!

評価:★★★★★

「この裁判から逃げたら過ちではなくなる。あんたは単なる犯罪者だ」
(本文引用)
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 先日、ある資格試験を無事終えたため、心置きなく読書読書。

 ・・・と言いつつ、佐方貞人シリーズだけは試験勉強追い込み中もやめられず。

 最後の1週間は勉強の友として、存分に堪能した。
 試験に落ちたら、柚月裕子氏にクレームをつけたい。

 「あなたの小説の面白さは、罪だ!」と。
 (おそらく合格していると思うが)

 優秀な検事でありながら、弁護士に転身した佐方貞人。
 
 敏腕ぶりは相変わらずだが、さて、今回はどんなスカッと劇を見せてくれるのか。
 
 今回は勧善懲悪のヒューマンドラマに加え、「読者をだます叙述トリック」もしっかり用意。



 「最後の証人」は、さながらミステリーのフルコースディナーだ。 
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■「最後の証人」あらすじ



 ホテルの一室で、ある殺人事件が起きる。

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 その事件のきっかけとなったのは、7年前の交通事故。

 小学生の少年が、飲酒運転・信号無視の車にひかれ、死亡した事故だ。

 事故の容疑者は建設会社社長で、公安委員長も務める人物。

 容疑者の罪は警察にもみ消され、不起訴に。
 
 少年の両親はその事実を知り、怒りに打ち震えながら日々を過ごす。

 そこで夫妻は、ある復讐を企てる。
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■「最後の証人」感想



 ミステリーに復讐はつきものだ。

 しかし本書で描かれる復讐は、ひと味もふた味も違う。

 読者を見事にだましつつも、「真の復讐」もしっかり遂行。

 ミステリー小説の復讐劇としては、文句のつけようがないパーフェクトなものだ。

 ちなみにこの復讐劇に騙されたのは、読者だけではない。

 検事も裁判官も陪審員も全てコロッと騙されている。

 読者は「その前段階」から騙されているため、ややレベルは違うが、周囲がざわつくミステリー、周囲がざわつく法廷劇とはこういうものかとただただ唸った。

 上質なミステリーとはこういうものをいうのだろうな・・・と、読んだ後しばらくボーッとしてしまった。

 柚月裕子氏は、佐方貞人シリーズ等を通して「正義」「使命」というものを色濃く描いている。
 しかし職業に対して最も使命感を持っているのは、柚月裕子本人なのではないか。

 正義が理不尽にねじ曲げられ、つぶされるのを見過ごせない。
 
 日々、そんなことを心の奥からわきあがらせながら、執筆しているのだろう。
 そう思うと、柚月裕子作品を読む際には、襟を正さずにはいられない。

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 ミステリー作家としては、もはや人間国宝の柚月裕子氏。

 これからもずっとずっと多くの作品を届けてほしい・・・そう心から願う小説家だ。

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柚月裕子「検事の死命」感想。正統派ミステリーでスカッとしたい人は必読!

評価:★★★★★

秋霜烈日の白バッジを与えられている俺たちが、権力に屈したらどうなる。世の中は、いったいなにを信じればいい。
(本文引用)
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 ビジネス界のヒーローが半沢直樹なら、法曹界のヒーローは間違いなく佐方貞人であろう。
 
 正義はたまには勝つ! いえ、常に勝たなければならない。
 正義と真実は、不当な権力に屈してはならない。
 そしてそれは、どんなに小さな出来事でも貫かねばならない。

 そんな信念を頑固なまでに持ちつづけ、実行・実現してしまうのが、銀行員・半沢直樹と検事・佐方貞人。

 本書「検事の死命」は、そんな佐方の信念が「これでもか」と伝わって来る快作だ。

 悪の策士に果敢に立ち向かう佐方は、いったいどんな「策」を仕掛けてくるのか。


 
 種明かしを見れば、心の底からハ―スッキリ!

 「検事の死命」は、正統派ミステリーでスカッとしたい人と、弱者の立場でスカッとしたい人には本気でおすすめの一冊だ。  
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■「検事の死命」あらすじ



 ある日、佐方のもとに痴漢事件の案件が舞い込む。
 
 事件が起きたのは、電車の中。
 車内は大規模イベントの影響で大混雑。
 そんななかで起きた事件だった。

 痴漢容疑をかけられたのは、地元の名家の男性。
 妻をはじめ親類縁者は名士の誇りが高く、男性の容疑を権力でもみ消そうとする。

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 一方、被害者は素行不良の女子高生。
 万引きや恐喝でつかまった過去もある。

 世間一般から見て、どちらが信用できる人間かは明らかだった。

 しかし佐方は違った。

 佐方は容疑者を「クロ」と見て、捜査を徹底的に詰めていく。
 そんな佐方には、大きな圧力が。

 容疑者の家が雇った弁護士は、絶対勝利の策をたて、事実を歪めていく。

 そこで佐方がとった戦略とは?
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■「検事の死命」感想



 本書には痴漢事件のほか、2編を収録。
 郵便物紛失事件と、佐方の父親に関する裏話も収められている。

 最もページが割かれているのは痴漢事件だが、郵便物紛失事件も傑作!

 佐方の住む地域周辺で、郵便物が届かない事態が頻発。
 どうやら、ある郵便局員が、現金の入った封書を盗んでいるらしい。
 
 容疑者を絞った佐方は、「ある作戦」で犯人を見事に追い詰めていく。

 本書は全体的に、「策」がテーマ。
 郵便物紛失事件は、言い逃れをしようとする容疑者を、ある作戦で窮地に追い込む。
 「刑事コロンボ」のような、佐方の鮮やかな作戦勝ちは、心から快哉を叫びたくなる。

 そして、件の痴漢事件。
 今度は悪者側も、入念に策を練っていく。
 もはや「佐方貞人もこれまでか!?」と天を仰ぎたくなるが・・・神様というのはいるものだ。

 容疑者側は、「策士策に溺れる」という「まさか」のラスト。
 「完璧」と思って用意した作戦が、純粋な真実にそっくりひっくり返される場面は、五臓六腑がピョンッと跳ね上がるほど愉快痛快だ。

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 正義の策は成功し、悪の策は失敗に終わる。

 スカッと爽やかすぎて「現実の世の中も、この物語のようだったらどんなにいいだろう・・・」と思わずにはいられない。

 正義は勝つ!と信じたい人。
 権力によって真実が歪められるのが許せない人。
 とにかく世の中納得いかない!とモヤモヤしてる人。

 本書を読めば、命の洗濯になること間違いなし!である。 

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「検事の本懐」感想。「検察側の罪人」と対比して読むのがおすすめ!

評価:★★★★★

「あいつは条件や証拠だけで事件を見ません。事件を起こす人間を見るんです」
(本文引用)
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 現在大ヒット中の映画「検察側の罪人」
 
 検事が「一線を越える瞬間」に、目を剥いた人も多いであろう。

 そこでオススメなのが、柚月裕子著「検事の本懐」。
 
 本書の主人公は、決して一線を越えないであろう若手検事。

 彼はなぜ、検事として一線を越えずにいられるのか。
 彼はなぜ、仕事や人生を失う覚悟で、正義を守り通せるのか。

 本書は、そんな名検事の「本懐」に迫る短編集。

 一冊だけでも十分すぎるほど面白いが、「検察側の罪人」と併せて読むと、より味わい深い。

 一線を越える検事と、越えない検事・・・同じ検事でも「本懐」が違うと、こうも結果は違ってくるのかと驚かされる。


  
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■「検事の本懐」あらすじ



 ある地域で、連続放火事件が起こる。

 県警刑事・佐野は犯人を挙げるため、毎日心血を注いでいる。
 それは市民の安全を守るため、そして、ライバル・佐野を見返すためだ。

 出世ばかりに目を向けてきた佐野は、南場に手柄を取らせないようあらゆる画策をしてきた。

 そんな姿を許せない南場は、佐野に横やりを入れられないよう、真犯人を追っていく。

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 南場はある日、一人の検事を紹介される。
 検事の名は、佐方貞人。
 まだ30歳にも満たない若手だ。

 ある日、南場はとうとう一人の男に行き着く。
 男は連続放火を認め、一気に事件は解決していく。

 これで佐野を見返せる-南場は安堵するが、佐方は納得いかない様子。

 連続放火事件のうち、1件だけ質が違う。

 この捜査は、森だけを見て樹を見ていないのではないか。

 さて、連続放火事件は本当に全て同一犯なのか。
 それとも?
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■「検事の本懐」感想



 本書は5話から成る短編集。
 検事・佐方貞人の尋常ならざる洞察力と嗅覚、そして「人間1人ひとりに対する圧倒的な誠実さ」が、意外な形で事件を解決していく。

 本書の魅力は、犯罪が絡んでいる内容なのに、読めば読むほど人を好きになれる点だ。
 
 たいていミステリーを読んでいると、事件の陰惨さや加害者の悪党ぶりに心がやられ、人間不信になりそうになる。

 しかし「検事の本懐」は、犯罪が色濃く描かれているのに、全ての人間が愛おしく思えてくるのだ。

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 その理由はもちろん、検事・佐方貞人の清廉さ・温かさだ。
 
 佐方貞人は、どんな犯人に対しても、敬うべき一個の人間としてしっかり向き合う。
 刑務所を出たり入ったりする者、疑獄事件への関与が疑われる者、過去に大きな過ちを犯した者、自分の家庭を窮地に追い込んだ者・・・。
 全ての者に、揺るぎない愛情をもって接していく。

 だから佐方は、冤罪を出さない。
 だから佐方は、決して一線を越えない。

 どんな人間に対しても、決してレッテルを貼らずに捜査するため、「本当の真相」に行き着くことができるのだ。

 「裁判所の真相」で終わりそうになった事件が、佐方の腕で「本当の真相」へと大きく舵を切る過程は、読み応えたっぷり。

 こんな物語を読んでしまったら、今、実際に起きている事件も、最初からすべて洗い流したほうがいいのでは・・・などと思ってしまう。(こんなことを言ったら、現実の検事さんに失礼かな?)

 一話一話が短いため、充実したミステリーを細切れ時間に読める。

 忙しい毎日、すき間時間に極上の読書タイムを過ごしたい人に、本書はおすすめだ。
 
 さらに「検察側の罪人」と併せて読んでみてほしい。

 著者は違うが、「検察側~」の最上と「検事の本懐」の佐方が戦ったらどうなるか?などと考えると、お腹の底からウズウズ。

 読書の楽しさが何倍、何十倍にも膨らむだろう。 

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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