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薬丸岳「天使のナイフ」、絶対自信のあった推理が見事に裏切られ愕然。

評価:★★★★★

「人を殺しておいて罪に問われないなんてことがあるか!」
(本文引用)
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 複数の書店で、「おすすめの一冊棚」に置かれていたので購入。
 かなり前にベストセラーとなった本なので遅きに失しましたが、何年たっても「おすすめ」とされれば、気になって当然。

 「読まなきゃ後悔する一冊」として、ようやく読みました。
 
 読んだ感想としては「ガッカリ」

 この「ガッカリ」とは、物語がつまらなくてガッカリしたのではありません。
 
 実はその逆。
 絶対に自信のあった推理が、完全にはずれていたのでガッカリしたんです。

 「天使のナイフ」は江戸川乱歩賞受賞作ですが、解説によると「ぶっちぎりの受賞」だったとか。


 

 読めば確かに、本書に追いつける候補作はちょっとなかっただろうなと容易に想像。
 「ガラスの仮面」の「二人の王女」のオーディションで、本書は北島マヤといったところです。
 (「いやはや驚きましたな・・・。いや、北島マヤと他の応募者との差ですよ」みたいな)

 アマゾンのレビューでも大絶賛の「天使のナイフ」。
 いったいどんな物語なのでしょうか。

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■「天使のナイフ」あらすじ



 桧山貴志は、4歳の娘を育てるカフェ店長。

 妻は4年前、生後5ヶ月の娘の前で殺されました。

 犯人は13歳の中学生3人組。

 少年法で守られ、3人とも罪に問われることなく、その後高校生として社会復帰をしています。

 桧山は彼らに対し訴訟を起こすことも考えましたが、育児を優先するため訴訟を断念。

 仕事と育児を必死に両立させていきます。

 ところが今になって、少年3人が次々と命をねらわれることに。

 桧山は自分の手で「事件後の少年たちの姿」を追い、「少年たちが命をねらわれる理由」を探っていきます。

 そこから見えてきた、意外な罪・後悔、そして隠された事件とは?
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■「天使のナイフ」感想



 ミステリーは、「どこまで崖っぷちに迫れるか」で面白さが決まります。

 つまり、真相がわかるのが遅ければ遅いほど、満足度はどんどん高くなります。
 
 そういう点で「天使のナイフ」は抜群。

 最初に「そういうことだったのか~」と思ってから少なくとも5回以上は、新たな「そういうことだったのか~!」を連発。
 
 本当の「そうだったのか~!」がわかる頃には、もう崖から爪先が出ているぐらいギリッギリ。
 さすがにもう、何も出てこないと思ったんですけどね。

 最後の最後まで、めくってもめくっても新たな真相が浮かび上がるので、読み終わったのに気づかなかったほど。
 読み終えた時、しばし呆然としてしまいました。 

 妻を殺した少年たちは、なぜわざわざそこにいたのか、義母はなぜ、娘を失ったのにそんな態度なのか。
 そして「天使のナイフ」の「天使」とは、誰を指すのか。

 最初から最後まで、登場人物全員の一挙手一投足に隈なく目を配ってみてください。

 さらに、1人ひとりについて想像力を最大限に生かし、「もしこの人が犯人だったら」と問いかけてみてください。

 そうすれば真相に「かする」ぐらいはできるかも・・・?

 少年法と犯罪被害者との乖離がテーマとなったシリアスな内容ですが、ひとまずはそれを置いといて、純粋にストーリーを楽しむのがおすすめ。

 作中に散りばめられた「点」をかき集め、最初と最後の事件が「線」でつながった時、事件にひそむモンスターが浮かび上がってきます。

 浮かび上がったモンスターを見たとき、あなたはたぶんこう思うでしょう。

 「その人はノーマークだった!」                    
 
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瑛太と生田斗真で映画化!薬丸岳「友罪」原作を寝食を忘れて読みました。

評価:★★★★★

 「幼い子供をふたり殺した人間をあなたは好きでいられますか」
(本文引用)
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 前から読みたいと思っていた「友罪」。
 瑛太さんと生田斗真さん主演で映画化されると聞き、「これはもう読まなきゃ!」と思い手に取りました。

 「友罪」を読んで驚いたのは「かなりベタな展開なのに、なぜか読む手が止まらない」ことです。

 隠すようなネタもないので、ネタバレも何も関係のない内容。

 それなのに陳腐な感じがなく、「これからどうするのだろう?」とページをめくる手が止まりませんでした。

 ものすごく展開が読めるのに、全く展開が読めないかのようにハラハラしてしまう・・・。

 「友罪」はありがちなストーリーに見えて、実に新鮮な読書体験をくれる傑作です。



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「友罪」あらすじ



 益田純一は名門大学を卒業後、ジャーナリストを目指していましたが挫折。
 住むところも失い、ネットカフェで寝泊まりした末、寮付きの製作所で働き始めます。

 製作所にはもう一人、採用された人物がいました。
 彼の名は鈴木秀人。
 鈴木は仕事はできるものの、製作所の誰ともなじもうとしません。

 しかし益田の人当たりの良さ故か、次第に益田と鈴木は打ち解け合い、親友と呼べる仲になります。

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 ある日、益田は工場の機械で重傷を負い、入院することに。
 その際、益田を助けたのが鈴木だったため、益田はどんどん鈴木を信頼していきますが、ふとした拍子にある疑いを持ちはじめます。

 14年前、日本中を震撼させた殺人事件。
 鈴木はその犯人なのではないか。

 益田はジャーナリストの知り合いを通じて、徐々にその確信を深めていきますが・・・?
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「友罪」感想



 誰にでも、思い出したくない過去や消してしまいたい過去、大切な人に知られたくない過去というものはあるものです。

 人命にまで関わる過去は、そうそうないかもしれません。
 でも「これを知られたら相手は離れてしまうのではないか」と思うような過去は、誰でも多少なりともあるのではないでしょうか。

 「友罪」の核となるのは益田と鈴木の「過去と友情」ですが、本書に登場する「過去」はそれだけではありません。
 事務員の女性にいつまでも付きまとう忌まわしい過去、心優しき寮長のあまりに悲しい過去・・・皆、心に大きな十字架を背負って生きています。

 「友罪」は、過去と愛情との葛藤をさまざまなパターンから描いているので、自分と重ね合わせてどっぷりと読みふけることができるんです。

 もし今、心から信頼できる人の重大な「過去」を知ってしまったら自分はどうするか。
 逆にもし、自分が深刻な過去を引きずっているとしたら、人にどこまで心を開くことができるのか。

 「過去」と「現在」と「未来」はどこまでつながるのか、そして本当の愛とは、その糸を断ち切るべきなのか、それとも過去も含めて愛することが真実の愛と言えるのか等々、読むうちにさまざまな思いが頭を駆け巡ります。

 ものすごく展開が読めるのに、なぜか先が気になってしかたない、読む手が止まらない。
 それはきっと「もしも自分がその立場に置かれたら、どうしたらよいのか答が欲しかったから」なのでしょう。

 特に終盤の、製作所社長の態度は「もしも自分がその立場に置かれたら」を考えさせてくれます。
 やっぱりこうなっちゃうのかな~・・・なんて。

 あなたが益田だったら? 鈴木だったら? 
 事務員の女性だったら? 寮長だったら? 社長だったら?etc

 登場人物全員に自分を当てはめて、じっくりと「過去」と「友情・愛情」との折り合いについて考えてみてください。

 私も今、考え中です。

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中学校の卒業生は読むべき!薬丸岳「ガーディアン」

評価:★★★★☆

 先生に自分は救えない。
(本文引用)
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 卒業式シーズンに読みたい一冊。
 しかし、他の青春小説とはちょっと・・・いや、かなり違う。
 
 読んでいる間は、まさかこれほど卒業式が似合う小説とは全く思っていなかった。
 だってひたすら重苦しく、ただただ学校なんて信じられなくなる物語なのだから。

 学校に潜む謎の自警団が、悪行をした生徒を成敗する姿を描く「ガーディアン」。
 一見、正義の味方が暗躍する物語に見えるかもしれないが、そこには大きな罠があった。

 それは、ある生徒のこの言葉が表している。

「ガーディアンはたしかにいじめをなくせるかもしれないけど、代わりにおれたちみんなをひとりぼっちにするんだ」





●あらすじ



 秋葉は中学校の英語教師。今の中学には赴任してきたばかりである。
 
 秋葉はその中学に違和感を覚える。それは、学校に不良がいないこと。生徒たちが皆、品行方正すぎるのだ。

 そしてこの中学には長期欠席する生徒が目立つ。たいていは1~2週間だが、なかには数ヶ月不登校の生徒もいる。
 長期欠席の理由は、いずれもひとつ。

 ガーディアンによる制裁だ。


●「ガーディアン」のここが面白い!


 机やロッカーに、ある目印が置かれると一斉にハブられる。
 その構図はどこか、漫画「花より団子」のF4による制裁を思わせる。

 しかしこのガーディアンによる制裁は、もっと厳しい。
 生徒だけでなく先生も標的となり、しかも制裁理由がもっともらしい。

 その「もっともらしさ」が、自警団ガーディアンを野放図にさせ、ますます問題をややこしくする。
 そのややこしさをどこで、どのように食い止めるかがこの小説の見どころだ。

 ガーディアンは一応、生徒の悪事を成敗するために結成されたものだ。
 しかし、その存在が暴かれようとすると、手段を選ばず無実の者を制裁する。

 その正義と悪の表裏一体感が、この物語の面白さ。
 どんな善行も、保身に走れば途轍もない悪行に変身する。
 それも、善行を施している本人が気づかぬうちに深刻になっている。

 この物語は、人間の独りよがりは思わぬ悲劇を招くということを色濃く描いている。



●まとめ


 「ガーディアン」ほど「皮肉」という言葉が似あう小説もなかなかない。
 「ガーディアン」ほど「爽やか」という言葉が似合わない小説も、なかなかないだろう。

 そんな何とも救いのない物語に見えたが、終盤では思わず涙がポロリ。
 まさかこんなに爽やかな着地が用意されているとは思わなかった。

 そして、着地した足が少し乱れたような余韻もナイス。
 今後の「ガーディアン」の動きを、ぜひ追ってみたいものだ。

 卒業式シーズンにぴったりの小説「ガーディアン」。
 中学校の卒業生は、ぜひ読んでみてほしい。

 自分は何を間違っていて、何なら信じることができたのか。
 そんな対話を、自分の胸の内で行なうことができるだろう。


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誓約 薬丸岳

冗談じゃない。あんな約束を守れるはずがないだろう。
(本文引用)
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 いやもう、とにかくストーリーが凝っていて驚いた。読んでも読んでも全く結末が見えず、途中何度、最後のページを開きそうになったことか。
 それをグッとこらえて読み切った今は、気分スッキリ。超難解なジグソーパズルを完成させたような爽快さだ。まさか、あんなところに最後のピースが転がっていたとはねぇ・・・。
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 主人公・向井聡は、妻子とともに幸せな家庭を築いていた。
 しかしある日、聡のもとに一通の封書が届く。中を開けると、一言だけ書かれた便箋が入っていた。 

「あの男たちは刑務所から出ています」



 実は聡は16年前、1人の女性とある約束を交わしていた。それは、自分の命を助けてもらうかわりに、2人の男を殺すというものだった。

 あの約束のおかげで、一命を取り留めた聡。しかし、あの約束のせいで、幸せな家庭も人生もこわしかねない聡。絶体絶命の状況のなか、向井聡はどうするのか。

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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