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百田尚樹「夏の騎士」。こんなに泣き笑いした小説初めて!一気読みで顔面崩壊した危険すぎる一冊。

評価:★★★★★

 「やればできるはずなんや。今までは、やらへんかったから、でけへんかったんや。そやけど、やればできる。ぼくらの中にはそんな力が眠ってるんや」
(本文引用)
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 こんなに思い切り泣いたり笑ったりした小説、初めて!

 「夏の騎士」は公共の場で読んではいけない。

 私はうっかり近所のカフェで読んでしまい、途中、笑いすぎてアイスコーヒーが鼻から噴出(ホントだよ)。
 その後は図らずも涙、涙で、アイメイクがモロモロに取れる始末。

 「夏の騎士」は、ずばり顔面崩壊小説

 デートの待ち合わせで「ちょっと時間があるから・・・」なんて気持ちで読んだら、大変なことになる。
 「夏の騎士」は、「今日は家族以外、誰にも会わない」という日に読むのがおすすめだ。


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■「夏の騎士」あらすじ



 本書は小6男子三人組の、ひと夏の経験物語。

 三人組の名はヒロ、陽介、健太。

 勉強もスポーツも苦手なテンプクトリオが、秘密基地を作りながら、突如「騎士団」を結成する。

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 騎士団の理念は、名誉・勇気・礼節を重んじ、仲間を大切にすること。
 そしてレディを守ること。
 
 彼らはクラスのマドンナ・有村由布子を姫に据え、守ることを決意。
 その旨をクラス全員に宣言する。

 クラスは爆笑の渦に包まれるが、彼らはおおいに本気。
 
 そんななか、由布子は騎士団に「ある挑戦」を依頼。
 騎士団としての本気度を確かめようとする。

 一方、地元では女児をねらった殺人事件が発生。
 
 騎士団は町に住む「怪しい人」をピックアップし、犯人を捕らえようと試みるが・・・?
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■「夏の騎士」感想



 「夏の騎士」の魅力は、まず「自分に厳しくなれる」こと。
 
 「自分に厳しく」といっても、己をキュウキュウに追い詰めるのではない。
 「よし、がんばろう!」「一所懸命生きよう!」という意欲が、不思議なほど自然とムクムクわいてくるのだ。

 レディ・由布子が出した「試練」に、騎士団が必死に立ち向かう姿。
 一歩一歩、何かを達成するごとに、「勇気」がひとつずつ増え、一回り大きくなるプロセス。
 
 仲間を守り、レディを守る騎士たらんとすることで、双葉から本葉になるように成長する彼らの様子は、とにかく痛快!
 「人生は、その時その時に真摯に生きれば、必ず素晴らしいギフトが待っている」・・・心からそう思える展開で、生きるのが楽しくなってくる。

 そして本書最大の魅力は、ずばり「他人に寛大になれること」だ。
 
 物語にはもうひとり、ヒロインがいる。
 それはマドンナ・由布子と正反対の壬生紀子。
 
 母親が精神を病み、いつも髪や服がボロボロ。
 勉強もさっぱりできないが、とにかく毒舌で、みんな紀子に泣かされている。

 ある日、文化祭のお姫様役で、女子たちが示し合わせて紀子を推薦。
 それは紀子に恥をかかせようという策略だが、事態は意外な展開に・・・?

 本書では紀子ほか、問題を抱える人物が複数登場する。

 彼らは常に白い目で見られたり、「悪人認定」されたりと、社会から爪はじきにされている。

 おそらく自分の身近にいても、「近づかないでおこう」と思ってしまうだろう。

 しかし本書を読んでいると、徐々にそんな差別意識が消えてくる。
 傲慢な気持ちがシュワシュワと溶けて、なくなってくる。

 相手の社会的立場などは関係ない。
 人としてどんな信念をもっているか。真の優しさ、勇気をもっているか・・・その観点だけで相手を見れば、人はどんどん優しくなれる、寛大になれる。

 色眼鏡で人を見ず、しっかりと「その人のまま」を見ることがいかに大切で、幸せをもたらすか・・・。
 「夏の騎士」はユーモラスな筆致で、そんなことを伝えてくれる。

 表面的ではない、「本当に豊かな気持ちになれる人間関係のつくりかた」を教えてくれるのだ。

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 思いもよらぬラストも見事。
 「油断させておいて、そうきたか!」と、そんじょそこらのミステリーも驚く急展開となっている。

 最初から最後まで、全く飽きることなく泣いて笑ってドキドキして、気づけば読み終えてしまった。

 そして今、つくづく「百田尚樹さんの引退」が惜しくてたまらない。

 本当にこの小説でペンを置いてしまうのだろうか。
 こんなにコンスタントに「おもろい話」を読ませてくれる作家さんは、なかなかいない。
 
 もしホントにホントで引退してしまったら、また作家活動を始めてもらうよう依頼しよう。

 「探偵!ナイトスクープ」で。

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「日本国紀の副読本」感想。「日本国紀」が1000倍おもろくなる裏話満載な一冊!

評価:★★★★★

猛り狂う人々に百田さんはこう言う。
  「『日本国紀』を異常に恐れる人たちへ。たかだか一冊の本やん。しかもホラーじゃないし。そこまで怖がらなくていいから、気になるんなら、読んでから、ここがおかしいよと言えばいいんじゃない?」

(有本香氏による「あとがき」より)
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 食事をしていて、こんな場面に出合うこと、ないだろうか。
 「この付け合わせ、メインにすごく合うし、アクセントになってて美味しい~!」

 その付け合わせこそが、「日本国紀の副読本」。

 副読本なのに、当の「日本国紀」より過激。リスキーでトリッキーでスパイシー。
 はっきり言って「日本国紀」を“食っている”。
 編集者・有本香氏が手綱を引かなければ、発禁本になっていたのではないかと思うぐらい強烈な本である。

 そう聞くと怖がる人もいるかもしれないが、そこは「日本国紀」と一緒。
 歴史はエンタテインメント、気軽に楽しく読めばよい。

 そもそも実際に、その場を見てる人は現在いないのだから、いろんな解釈・見方があって構わない。

 もっと自由に歴史を楽しもうよ、「日本人ってどんな民族なの?」とちょっと考えてみましょうよ。

 「日本国紀」も「日本国紀の副読本」も、それぐらいの軽やかさで読めばよい。

 「おもろいおっさんが、なんかおもろいこと書いてるなぁ」ぐらいの感覚で読めば、自然と歴史が頭にスイスイ。
 「当たり前だけど、歴史って人間でできてるんだなぁ。人間って面白いなぁ」と、ウキウキすること間違いなしだ。



 
 さらに本書は、ベストセラー作家・百田尚樹の「仕事の仕方」も公開。
 作家業引退前に読んでおけば、「実は百田尚樹ってね・・・」とちょっと自慢げに話せるだろう。
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■「日本国紀の副読本 学校が教えない日本史」内容



 本書ではまず、「日本国紀」が生まれた理由からスタート。

 百田尚樹氏は、なぜ日本の歴史を綴ろうと思ったか。
 その動機にからめ、百田氏と編集者・有本氏が歴史教育の問題点に言及。
 
 自虐史観ばかりはびこる現状に、疑問を呈していく。
 
 確かに日本人は、さまざまなミスもしている。
 
 しかしなぜ日本ばかりが責められる歴史を、我々は学ばされてるのか?
 「日本人の良さ」を掘り起こした歴史、日本人であることを誇らしく思う歴史が、なぜ伝えられないのか?
 
 百田氏と有本氏が丁々発止のやり取りで、「歴史本・歴史教育とはかくあるべきか」を熱く語る。
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■「日本国紀の副読本 学校が教えない日本史」感想



 本書をおすすめするのは、当然と言えば当然だが「日本国紀」を読んだ人。

 「日本国紀」という本が、いかに「歴史のなかの小さな石ころのような場面」にスポットを当てた本か。
 「日本国紀」という本が、いかに「人間」を描いたものであるか。

 改めて「日本国紀は、やはり今までにない歴史本だったんだな」に気づかされる。
 そして「日本国紀を読んだ私って・・・近年稀にみるエンタテインメントを味わっちゃったのかも」とムフフ笑いが止まらなくなるだろう。

 たとえば本書では、「日本国紀」を書くにあたり「犬のお伊勢参り」に力を入れたことを公開。
 

有本  ある日の夜に百田さんが「犬のお伊勢参り、知ってる?」と。「知りません。何ですか」と聞いたら先ほどの話をしてくれて「ええ話やけどなあ。もうページ数が足りないから書けないやろ」と。「いやあ、それは書いた方がいいんじゃないですか。いい話ですよね。滅茶苦茶いい話ですよ。日本人の本質を指示していますよね」「わかった。ほな、あしたの朝までに下書き書いといて!」「はい?」と(笑)



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 犬のお伊勢参りがいかに「いい話」かは、「日本国紀」をお読みいただくとして、副読本にはこんな「熱い裏話」が満載。

 教科書に載ってる「王道の歴史」だけでは、歴史の魅力はわからない。
 小道にそれたプチエピソードやコボレ話のなかに、歴史の面白さ・人間の面白さが詰まっていることに、本書は気づかせてくれるのだ。

 また、とある歴史教育について、強烈な批判をしている点も読みごたえあり。
 百田氏・有本氏の意見が正しいか否かは置いといて、まっさらな子どもたちに歴史を教えるという行為には、どんな意義があり、どんな危険性をはらむのかを改めて考えさせる。

 「歴史を学ぶこと」は薬にもなるが、場合によっては猛毒になるのかもしれない・・・。

 本書を読むうちに、「歴史」を学ぶことの重みや恐ろしさにゾクリ。
 そんな点も、「日本国紀」および副読本は、「未だかつてない歴史本」なのだ。
 
 「日本国紀」を楽しんで読んだ人なら、この副読本を読めば面白さ1000倍。
 「付け合わせやワインが美味しいと、メインってもっとおいしく感じるんだよねぇ・・・」というおいしい食事の思い出に浸りながら、ぜひ読んでいただきたい。

 「日本国紀」と同時購入して一気読みするのもおすすめ!(※経験者=私が言うのだから間違いない。)
                                             
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「日本国紀」感想。学生時代に読みたかった・・・。素直に「面白い!」とグイグイ読める歴史本。

評価:★★★★★

 二十一世紀の今日、世界中で「人種差別は悪である」ということを疑う人はいない。しかし百年前はそうではなかった。当時、絶対強者だった欧米列強に向けて、初めて「人種差別撤廃」を訴えたのは、私たちの父祖である。日本が世界のモラルを変えたのだ。
(本文引用)
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 「やっぱり百田尚樹さんは、猛烈におもろい話を書くおっさんなんだな」
 本書を読み、改めて「エンターテイナー・百田尚樹」のすごみを感じた。

 「日本国紀」の内容については賛否両論あるのかもしれないが、私は単純に非常に楽しく読んだ。

 「愛国心を打ち出している」といっても、特に過度なナショナリズムは感じない。
 
 歴史のなかの「ちょっとした小ネタ」から、「そういえば日本人って、そういう美点あるよね」と気づかせてくれる。

 そういう意味で、本書は明らかに「教科書とは違う」歴史本。


 あの将軍の意外な素顔、あの風雲児・麒麟児・開拓者たちの驚愕のエピソード・・・。
 教科書には載っていない「こぼれ話・裏事情」から、日本人の良さを発見!

 財布を落としても戻ってくる唯一の国、焦土から驚異的な発展を遂げた国の素顔が、本書からはありありと見え、気がつけば心がホクホク。
 
 「こんなに面白くて、ウキウキする歴史本、初めて!」とページをめくる手が止まらなかった。

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 まだ「日本国紀」を読んでいない方、「物議を醸してる本だから、読むのが怖い」と思っている方。
 恐れることは何もない。
 肩の力を抜いて、「へ~、こんなことがあったんだねぇ」と、ぜひテレビの教養バラエティでも観る感覚で読んでいただきたい。
 (と言いつつ、私も怖くてなかなか読めなかったんだけどね・・・。ビクビクしないで、早く読めばよかったと猛省。) 
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 「日本国紀」の魅力は、まず当時の出来事と今の関心事とを、見事に結び付けている点だ。
 
 たとえば古代なら、日本の天皇制度を細かく解説。
 万世一系とはいったい何なのか、そしてなぜ天皇は男系にこだわるのか。
 
 脈々と続いてきた天皇制がギリギリの状況になっている今、本書で改めて「天皇制の起源」を知ると面白い。

 今まで「女性天皇でもいいんじゃない?」「皇位継承権をそこまでこねくり回さなくても・・・」と安易に考えていたが、本書を読むと「そういうわけにもいかないのね・・・」と「天皇制の底知れぬ深さ」がよくわかる。

 そして江戸時代の出来事から、現代の原発事故につなげている論も「なーるほどぉ!」と膝を打つもの。
 
 黒船来航で、何の準備もせず慌てふためく幕府。
 しかしアメリカ側は突然やってきたわけではない。

 オランダに日本との仲介を長い時間をかけて依頼し、日本の情報を集め、準備万端で日本へ。
 そして幕府側も、実は「アメリカ艦隊がやってくる」という情報を知らされていたのだ。

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 にも関わらず何の準備もせず、いざペリーが来たら大慌て。
 百田氏はそのお粗末さについて、現代の「原発論議」につなげてこう語る。

 これをどう見ればいいのだろう。普通に考えれば、文化・文政の頃には、幕閣らも、いずれ欧米列強が武力を背景に開国を迫ってくることはわかっていたはずだ。


 にもかかわらず、幕府は五十年以上、何もしなかったのだ。その理由は「言霊主義」にあると私は見ている。
 日本準は昔から言葉に霊が宿ると考えていた。わかりやすくいえば、言葉には霊力があって、祝福を述べれば幸福が舞い降り、呪詛を述べれば不幸が襲いかかるという信仰である。
 とくに後者について、「あってはならないこと」や「起こってほしくないこと」は、口にしたり議論してはならないという無意識の心理に縛られているのである。


 そこから百田氏は、現代でも「最悪の事態を想定した議論が避けられる」という問題に言及。
 

 「原発に大規模な事故を想定することは許されない」という考えから、議論以前につぶされていたという事例がある。

と主張する。

 普通の社会科の教科書で、ここまで「昔と今」をつなげて書かれることはそうそうない。
 本書は「日本の素晴らしさ」を書くうえで、日本人の気質・精神に迫り、「失敗の本質」にまで言及する。
 
 「日本国紀」が「教科書では教えてくれない歴史本」と言われるのは、ただ時系列的に歴史を書くのではなく、今と昔を結びつけるから。
 「歴史の中心に一本通った日本人の特徴」をあぶりだすから、読んでいて面白いのである。

 「あれ?じゃあ、この本、日本の良さじゃなくて欠点を書いてるの?」と思われるかもしれない。

 いえいえ日本の美点もたっぷり紹介。
 とはいえ、極端なナショナリズムを書いているわけではないため楽しく読める。

 たとえば江戸時代。
 本書で紹介される数々のエピソードからは、「後の日本の急激な発展」が予想できる。
 
 勘定奉行・荻原重秀は貨幣改鋳を打ち出し、貨幣を「金銀の価値」から「信用の価値」へ。
 その結果、ダメージを最小限に抑え、デフレ回避・経済成長という大きなメリットをもたらしている。

 百田氏はその功績について「ケインズを二百年以上も先取りした」と評価している。

 また幕末の、鍋島直正の活躍も読みごたえあり。
 西洋の科学技術を積極的にとりいれ、日本初の実用蒸気船を完成。

 さらに驚いたことに、日本で初めて牛痘ワクチンを長男に接種。
 この行動が後に、日本での天然痘撲滅に貢献する。
 「日本にもジェンナーがいたのか・・・」と、本書を読み心底驚いた。
 (ジェンナーは使用人の子どもに接種したらしいが、鍋島直正は本当に息子に接種したとのこと。
  いくら他国で実績が認められたといっても、驚くべき勇気である。)

 そして島津斉彬も、負けじと近代化に着手。
 本書ではさらに、大名にとどまらず「実際に蒸気船を作った職人たち」にもスポットを当てる。

 学校では学べない歴史・教科書には載ってない「トリビア歴史」が、本書には詰め込まれているのである。

 よく「歴史は面白い」という声を聞くが、「日本国紀」を読むと「本当に歴史って面白いんだな」としみじみ思う。
 
 1つひとつの出来事に、当時を生きた人々の思いが込められている。
 何事も、理由なく起きたわけではない。
 そして日本が驚異的な発展をしたこと、天皇制がここまで議論を醸しているのも、底知れぬ大きな理由がある。

 「日本国紀」を読んでから、学校の歴史教科書を読むと、一気に活字が彩を増して見えるだろう。

 最後に私が本書の中で、いちばん気に入っているエピソードを紹介。

 ジョン万次郎は14歳の時、乗り込んだ漁船が難破。
 アメリカの捕鯨船に救助される。

 米国人の船長は、「海外に出た日本人は帰国すると処刑」の事実を知り、ハワイに降ろすことに。
 しかし万次郎は捕鯨船に乗りつづけ、船長の養子に。
 
 その後、万次郎は米国で数学や測量を学んで帰国。

 幕末で、見事な操船技術を見せ、日本の夜明けに活躍する。

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 その話だけでもホロリと来るが、それに続くエピソードにまたホロリ。

 船長の子孫と、万次郎の子孫は今でも交流。
 万次郎の故郷と、船長の家のあった都市は姉妹都市となっているという。

 こういうエピソードを読むと、「人間っていいな。国境がない関係っていいな」と本当に思う。
 船長の厚意がなかったら、日本の夜明けは一歩も二歩も遠ざかっただろう。
 
 本書は「日本の素晴らしさ」を伝えると同時に、「日本が素晴らしい国でいるためには、外国の力・優しさ、国境を越えた思想が不可欠」と伝えてくれているのだ。

 だから「日本国紀」を恐れる必要は何もない。
 「読むとナショナリズムに走りそう」と思い込んでる人もいるかもしれないが、むしろ逆。
 
 もっと柔軟に、もっと優しく、日本と世界を見つめられるようになるだろう。

 世界を「おもろく」感じることができるだろう。
                                             
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「フォルトゥナの瞳」を読み「これは映画化されるはずだわ」と納得。ラストは「あの名作」を彷彿!?

評価:★★★★☆

「最後に、もう一度言っておくが、他人の運命を変えると、後悔することになるぞ。お前にもいつかわかる時が来る-」
(本文引用)
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 「フォルトゥナの瞳」、2019年に映画公開!

 映画化の一報を聞き、私はすぐに「フォルトゥナの瞳」を読みました。
 百田尚樹さんの本はかなり読んでいるつもりなのですが、なぜか「フォルトゥナの瞳」だけは読んでいなかったんです。

 そして読んだ感想。

 「これは映画化されるはずだわ」

 「フォルトゥナの瞳」は、読みながら映像がまざまざと浮かびます。
 ゆれる吊革、洋服が歩く交差点、上下動する鞄、書類に伸びる洋服の袖、指輪・・・。

 「これ、映画で観たらめちゃくちゃ面白いぞ!」
 今から、映画館で「フォルトゥナの瞳」に映る映像を見られるのが、ヒジョーッに楽しみです。


 
 主役が神木隆之介君というのもナイス。

 こういう神がかった青年の役は、神木君にしかできないかも。
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■「フォルトゥナの瞳」あらすじ



 主人公の木山慎一郎は、幼い頃、家事で家族を失います。
 その後、ただただ孤独な人生を歩みますが、実直な人柄が認められ就職。

 車の塗装工として腕を上げ、安定した社会生活を送ります。

 しかしある日、慎一郎は電車のなかで奇妙な現象と出会います。
 
 ある男性の手が透けて見えるのです。
 
 吊革は見えるのに、人間の手だけが見えない。

 その直後、男性は交通事故で死亡。

 仕事先でも、指先が透けて見えたお客様が急死するという出来事が次々と起こります。

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 どうやら慎一郎は「フォルトゥナの瞳」という特殊能力を持っている様子。
 
 そういえば火事が起こる前、妹の手も透けて見えた・・・。

 慎一郎は、過去にその能力を生かし家族を救えなかったことを猛烈に後悔。

 現在は「フォルトゥナの瞳」を生かし、体が透けて見えた人に声をかけ、死から遠ざけるよう努めます。

 しかしそれには大きな代償があったのです。
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■「フォルトゥナの瞳」感想



  「フォルトゥナの瞳」のラストは、ネタバレ覚悟で言うと「SF版 塩狩峠」

 「塩狩峠」は三浦綾子さんの不朽の名作ですが、「フォルトゥナの瞳」はそのエッセンスをSF娯楽大作にした感じです。

 これは別に「塩狩峠」を高尚なものと位置づけ、「フォルトゥナの瞳」を「しょせん娯楽」と貶めているわけでは全くありません。

 解説にもありますが、百田尚樹さんはやっぱり「おもろいお話を書くおっちゃん」なんです。

 「おもろいでっか?」と聞かれれば、素直に「はい、めちゃめちゃおもろいです」と言えるのが百田尚樹作品。

 人生の深みをじっくり考えたければ「塩狩峠」を読み、「とにかく面白い小説を一気に読みたい」なら「フォルトゥナの瞳」を読むというように分けて考えれば一挙両得。

 「運命を変える」究極の行動について、いっぽうは愛と信条、いっぽうはエンタメとして味わうことができます。

 やっぱり百田尚樹さんは、稀代の「おもろい話を書くおっちゃん」なんだなと再確認しました。

 ちなみに本当のラストは、ちょっぴり「影法師」テイスト(「影法師」大好き!!)。
 「袋とじにしても良かったのでは?」と言いたくなる、インパクトのある種明かしでした。





 映画で、その「ラストofラスト」がどう描かれるのか。
 脚本に期待!です。

 もし人の死を予言できたら、自分はどうふるまうべきか。
 見て見ぬふりをするか、それとも・・・?

 そんなことを考えながらランニングをしていたら、思いっきりスッ転びました。

 「フォルトゥナの瞳」を持っている人が近くにいたら、爪の先が薄くなるぐらいになっていたかも。
 いえ、もしかすると「フォルトゥナの瞳」を持った人が私に転ぶよう仕向け、そのおかげで命が助かったのかもしれません。
 (転ばずに進んでいたら、車にぶつかったかもしれないとかね)

 日常生活にまで影響を与えてしまう“おもろい話”「フォルトゥナの瞳」。

 映画公開前に読めば、映画がもっと楽しみになりますよ。

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カエルの楽園  百田尚樹

評価:★★★★☆

  「これがわしらの運命だ。お前たち若いものは知らないだろうが、こういうことは繰り返しあることなのだ。この運命に逆らうことはできない」
(本文引用)
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  書店でもずーっと平積み、ネットでもずーっと話題になっているので、「流行にはながされまい」と、日々抗っている私もさすがに折れた。

 なぜここまで話題になっているのかは、読めばわかる。
 百田氏の日頃の言動・活動と照らし合わせて、「これ、日本のことを言ってるよね」「ナパージュ(NAPAJ)っていう国名が、もうすでに・・・」「だからこの本は、某新聞社で採りあげられない」等と様々な噂が飛び交っているからだ。

 そう聞くと、却って敬遠してしまう人も多いかと思うが、そんな先入観を抜きにしても面白い小説だと思う。日本がこのような状況でなかったとしても(「このような状況でなかった」ら、この小説は生まれてないかもしれないが)、書店で長期間平積み、ネット騒然の話題作になったんじゃないかな。



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ボックス! 百田尚樹

 「自分よりも優れた人を素直に認めて、それに近付くように努力する心って、とても大事なものやと思う」(本文引用)
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 夢中になって読める本とは、主人公が何かに夢中になっている本だ。
 そしてそのような本からは、作者が夢中になって書いている様子が伝わってくる。
 作者が「面白い!これ、面白いで!」と楽しみながら書いている本は、読者にとっても、きっとうんと面白く、うんと爽やかな気持ちになれる。
 そんな風に思える本が、この「ボックス!」
 「海賊とよばれた男」で本屋大賞を受賞した百田尚樹氏による、青春街道まっしぐらのスポーツ小説だ。
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 舞台は大阪。
 ある日、高校の英語教師・高津耀子は、電車内で若者に絡まれる。
 そこで耀子は、居合わせた2人の少年に救われる。

 その2人とは、カブちゃんこと鏑矢義平と、ユウちゃんこと木樽優紀。耀子の勤める高校の生徒であった。
 
 2人は幼馴染の親友同士だが、タイプは驚くほど正反対。
 勉強は苦手だけど天才的なボクシングセンスをもつ鏑矢、スポーツはできないが勉強はトップクラスの木樽。
 恐れ知らずで冗談ばかり言っている鏑矢と、怖がりで物静かな木樽。
 しかし互いを思う気持ちは、誰よりも強い。そんな固い絆をもつ2人である。



 
 2人はスポーツと勉学、それぞれの道を歩んでいたが、ある日木樽は突然、ボクシング部に入部する。
 過去に受けたいじめや、憧れの女性を守れない非力さに悩み、強くなりたい一心で決断した入部だった。

 鏑矢と木樽、天才ボクサーとヒョロヒョロボクサーとの友情は変わることなく続くが、いつしか二人は最大のライバル同士になる・・・。
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 はっきり言って王道である。王道すぎると言ってよいぐらい、道にそれることなしの王道ストーリーである。
 でもこれが、いいのだ。
 こういう物語は、こういう展開になってほしい!という願いを全て吸い込んでくれたかのようなストーリーが、何とも心地好い。

 命知らずの鉄砲玉・鏑矢と、理知的で慎重な木樽。
 小説や漫画にありがちなデコボココンビで、周りの人が訝しがるという点も、実に王道スタイル。ややもすると陳腐になりがちなキャラクター設定だ。

 しかし、この小説はひと味違う。

 学校生活やボクシング部の活動、そしてボクシングというスポーツの奥深さ-アマチュアボクシングの細かな規則、命を失うかもしれないスポーツに取り組むことに対する心構え-等が非常に緻密に熱をもって描かれているため、なぜ鏑矢と木樽がそこまで仲が良いのか、なぜ木樽は鏑矢を慕い、また木樽の成長を鏑矢が心から喜べるのかが、強い説得力をもって伝わってくる。
 
 「こんな風に共に泣き、共に笑い、切磋琢磨しあえる友人をもてたら、何て素敵な人生だろう」
 
 紆余曲折ありながらも、揺らぐことのない敬愛の念をもちつづける2人を見ていて、心底羨ましくなった。

 そしてそれは、主人公の2人だけではない。
 
 厳しく強い愛情をもって部員たちを指導する監督・沢木、ボクシングは弱いが誰よりも人望のあるキャプテン・南野、そしてモンスターと称される寡黙な最強ボクサー・稲村・・・。
 誰も彼もが、ボクシングを通して、己の恐怖心や驕慢さと日々戦っている。だから皆、驚くほど他人に優しく、読んでいるとどんどん心が浄められてくる。

 なかでも忘れてはならないのが、ボクシング部マネージャー・丸野智子の存在だ。
 成績は学年トップだが、体が弱く、学校を休みがちで大人しい智子。しかし実は鏑矢の大ファンで、試合や朝礼で鏑矢の名が呼ばれると、黄色い声援を送りまくる。
 決して美人とはいえない智子に声援を送られ、最初は邪魔に思っていた鏑矢だが、彼女の誠実さと朗らかさは、次第に鏑矢をはじめ部員たちの心をほぐしていく。
 
 智子は後に、さらに違った形でボクシング部にとってなくてはならない存在となるのだが、その過程はもう涙なしでは読めない展開。
 智子を中心にボクシング部員が心をひとつにし、試合に臨んでいくシーンなどは、もう涙がページの上にボタボタと落ちて困ってしまった。
(かの児玉清さんは「永遠の0」を読み、「僕は号泣するのを懸命に歯を喰いしばってこらえた。が、ダメだった」と語ったと言うが、おそらく「ボックス!」のこの場面を読んでも、同じ言葉を語られたのではないかと思う。あくまで推測だが。)

 愛、努力、友情・・・どれも古臭い言葉かもしれない。前時代的な発想なのかもしれない。
 でも、この小説を読むと、たとえ古いと言われても、愚鈍と言われても「愛、努力、友情」というものを、近道をすることなく地を這うようにして手にした者が、最も強い人間なのではないか。そう信じることができる。

 人を信じられなくなっている人、何かに夢中になっている人、でも努力が報われないと自暴自棄になっている人、そして一生青春を送りたい人に、心からお薦めの一冊である。

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映画もどうぞ↓

影法師 百田尚樹

 儂は生涯のほとんどを影のように生き、人を殺めてきた。奴もまた影のように生きた。しかし奴は儂とは違い、人を生かしてきた。
(本文引用)
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 -「彰蔵は両手で地面を掻き毟り、犬のような咆哮を上げて、ただ泣いた」-。

 これは、本編ラストの一文であるが(でもネタバレにはならないのでご安心を)、「彰蔵」を私の名前に変えれば、そのまま読み終えた瞬間の私の状態となる。
 それほど激しく心揺さぶられた小説だ。

 「海賊とよばれた男」で本屋大賞を受賞、2013年12月には映画「永遠の0」公開と、今や押しも押されもせぬベストセラー作家となった百田尚樹。
 しかし私は、この作品を一番に推したい。

 時代小説「影法師」

 全人生を賭けて、友を生かそうとした男たちの物語である。


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 時は江戸。
 本州の北に位置する茅島藩・筆頭国家老の名倉彰蔵は、ある日、友の死を知らされる。
 
 その友の名は、磯貝彦四郎。
 
 家柄も良く、勉学にも剣術にも長け、人柄も申し分なく皆の憧れだった青年は、若くして不遇の死を遂げていた。

 貧しい下士の身分に生まれた彰蔵(幼名:勘一)は、幼い頃、上士に父親を斬殺される。
 子供たちをかばったが故の悲劇であった。
 その時、泣きじゃくる勘一を励ましたのが彦四郎。それが生涯の友との出会いであった。

 厳然たる武士間の身分差別と闘うため、勘一は勉学、剣術に励み、中士以上の子弟しか入れない藩校に入学を許される。
 そこで勘一は、いじめと身分差別を乗り越え、彦四郎、虎ノ丞、信左ら生涯の友と出会う。

 しかし勘一は、その後も世の中の理不尽さを次々と目の当たりにする。
 特に勘一の心を動かしたのは、一揆を起こした農家が一家もろとも処刑された沙汰。
 老人から5歳の子供まで容赦なく執行される刑の残酷さは、勘一の武士としての使命を確たるものとした。

 米さえ多く実れば、皆が豊かになり、少しでもこのような悲劇はなくなる。

 そう考えた勘一は、かつて不可能と言われていた広大な新田開発に、人生を賭けて取り組んでいく。
 その間、勘一は順調に功成り名遂げていくが、一方、彦四郎の人生は数々の不祥事で坂道を転がるように落ちてゆく。
 しかし、それから20余年、彦四郎が世を去ってから、驚くべき真実が明らかになっていく・・・。
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 武士間における絶対の上下関係を越えて、刎頸の契りを結ぶ勘一と彦四郎。
 文字通り「君のためなら首をはねられてもいい」と誓い合う熱き友情と崇高な心は、まるで江戸時代版「君たちはどう生きるか」

 世の中にこれほど慎ましく美しい「心」があるだろうか。これほど愛し敬える「友」がいるだろうか。
 いや、これは小説、フィクションだ。それにそもそも時代だって違う。
 誰かのために本当に命を賭けることなど先ずないだろうし、故にこれほど深い愛情や優しさに気づくことも、現代はないかもしれない。
 しかし、たとえ命は賭けなくとも、勘一と彦四郎、そして虎ノ丞、信左・・・彼らのように清々しく生きてみたい、生きていきたい。心からそう思わせる命の輝きが、この小説にはある。

 さらに本作品の凄いところは、ただ泣かせるだけではない。
 読むものを一瞬たりとも離さない勢いで、様々な出来事が間断なく起こる。それも、どれひとつとして疎かになっておらず、最後の「驚くべき真実」に完璧につながっているのだ。
 そのせいだろうか、単行本1冊にも関わらず、2段組み全3巻ぐらいの小説を一気に読み終えたような充実感がある。

 武家の厳しさ、農家の苦しみ、執政の企み、清らかな恋、隅々まで澄み渡る熱き純粋な友情、そしてミステリー顔負けの真相。

 剣の一振りまで無駄のないストーリー展開で、ぐいぐい読ませ、気がつけば読み手は滂沱のごとく涙を出している。
 「こんな小説が読みたかった!」。そう思わせてくれる傑作だ。

 ちなみに文庫本には、単行本に収められなかった「もうひとつの真相」が書かれている。
 単行本をすでに読んでいる人は損をした気分になるかもしれないが、憤ることはない。

 単行本を読んだ人も文庫を読んだ人も、「これなら許せる」と思える、実に爽やかな「真実」である。

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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