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どんでん返しの極致!下村敦史「生還者」。ラストの「おまけどんでん返し」がまた素敵。

評価:★★★★★

 背筋を戦慄が駆け上ってきた。
 真実は逆だったのではないか。
(本文引用)
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 「あー、どんでん返しのある本が読みたい!」

 そうお思いなら、ハイ、どうぞ。

 下村敦史の「生還者」は、どんでん返しの極致。
 「失踪者」のどんでん返しぶりにも痺れるが、「生還者」はその上をいっている。

 冬山の惨劇は、なぜ起こったのか。
 生還者たちの証言は、なぜこうも食い違うのか。

 推理が二転三転コロコロコロコロ転がった末、行き着いたのはゾゾーッとする真実。

 そしてラストには「おまけ」の、とびきり素敵な「どんでん返し」が。

 どんでん返しが読みたい方なら、「生還者」一冊あれば、ホクホク気分でひと冬越せるだろう。




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■「生還者」あらすじ



 標高世界3位の山、カンチェンジュンガで悲劇が起こった。
 大規模な雪崩が発生し、4名が死亡。
 しかし奇跡的に生還した人間が、2人いた。

 生還者がいたことに世間は驚いたが、驚きはそれだけではなかった。
 2人の証言は、まるで正反対。

 生還者の1人・高瀬は登山隊を猛烈に非難し、そのなかの1人に助けられたと証言。
 ところが2人目の生還者・東は、高瀬の証言を真っ向から否定。

 いったいどちらの言葉が本当なのか、世間の耳目を集めることとなる。

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 そこで真相究明に乗り出したのが、死亡者の遺族・増田。
 兄を失った悲しみと、4年前の「ある後悔」から、何としてでも事件の真相を突き止めようとする。

 そんなある日、遺族の妻からこんな言葉が漏れる。

 「何のために登るの、って訊いたら、主人は『断罪が必要なんだ』って答えました」

 果たして断罪とは、誰の罪を裁くことなのか。
 そして本当の罪人とは誰なのか!?

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■「生還者」感想



 冒頭で書いたように、本書はとにかく「どんでん返し」が秀逸。

 日光を見ずして結構と言うな。
 「生還者」を読まずして「どんでん返し」を語るな。

 と言いたくなるほど、見事な返しっぷりである。

 真っ向から対立する、2人の証言。
 世間は「どちらかが嘘をついている」と騒ぎ立てるが、そもそも「証言の対立=嘘と本当の対立」と言えるのか?

 そこに「何か」が入り込む余地はないのか?
 2人の意見を両立させる「真実」の可能性というものは、かけらもないのか?
 
 読むうちに、どんどん思考の幅が広がり、何だか頭脳がバージョンアップ。

 そして「もうわかった。後は消化ゲームだな」などと油断していると、思いっきりガツン。

 「そんなことって・・・!?」と全身が一気に冷えていくのがわかるだろう。

 さらに「生還者」は、どんでん返しのオマケプレゼント付き。

 このラスト、袋とじにしても良かったんじゃないだろうか。

 全編全く飽きることなく、非常に楽しく読めたが、ラストでさらに読後感がジャンプアップした。

 こういう物語、大好きだ!

 「どんでん返し」「山岳ミステリー」が好きな人に、絶対おすすめの「生還者」。
 そしてココだけの話、「ちょっと幸せ気分になりたい人」にも、ぜひ読んでほしい傑作だ。

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告白の余白  下村敦史

評価:★★★★☆  

 「京都人と付き合うのに大切なんは、たまーに漏れる本音を聞き逃さんことやなあ」
(本文引用)
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 確かにミステリー小説は、登場人物のちょっとした発言から事件解決の糸口が見つかることがままある。
 しかし、ここまでとことん「セリフ」だけで事件をほどいていく小説も珍しい。ラジオ小説として放送したら、もんのすごく面白そうだ。ぜひ実現してほしい。
 (それにしても下村敦史さんの作品は、出るたびに磨きがかかっていく気がする。私にとって、いよいよ目の離せない小説家のひとりとなりつつある。)
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 ある日、北嶋英二のもとに双子の兄・英一が姿を現す。
 農業を営む実家を出たまま帰ってこなかった英一。そんな兄の突然の帰省に、英二も両親も驚くが、翌日、さらに驚く事態となる。何と英一が自殺するのである。



 英一は自殺する直前、両親に農地の生前贈与を求めていた。そして遺書には、2月末までにある女性が来たら、その女性に土地を譲渡してほしいという指示が書かれていた。
 英二はその謎を探るべく、その女性が住む京都に向かう。
 嘘か実かつかめない言葉が飛び交う土地で、英二は兄の死の真相をつかめるのか?

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失踪者  下村敦史

評価:★★★★★

 お前はなぜ生還しながらも死者となったんだ?
(本文引用)
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 読みやすい文章と、純度の高いミステリーで、山岳の素人でも非常に楽しめた。

 実はこの物語、謎があまりにも深いので、モヤモヤした結末になるのでは?と疑心暗鬼のまま読み進めた。ところがどっこい、その深い謎に隠された事実は、かなりスッキリとしたもの。「あ~、そういうわけだったのか!」とおおいに納得できるものだったので、爽快な気持ちで読み終えることができた。

 こういう、物語自体に深みはあるのに、謎解きがカキーンと素直なものは大好きだ。
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 登山家の真山道弘は、極寒の氷雪峰に立っていた。親友・樋口の遺体を引き上げに来たのだ。



 樋口は10年前、真山と共に登山中、クレバスに転落した。
 真山は、そこで生命尽きたであろう樋口を置き去りにしたことを悔やみ、10年経ってやっと迎えに来た。

 しかし、そこで見た樋口の遺体は、明らかに数年、歳をとっていた。
 そう、10年前、樋口は死んでいなかった。その後生還し、数年後、再び同じ場所で樋口は絶命したのだ。
いったいなぜ、そんなことを・・・?

 真山は、親友の二度の死の謎を追う。
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 まさに、狐につままれたような摩訶不思議なストーリーである。

 遺体が歳をとる?一度死んだ人間が、わざわざ同じ場所で再び死ぬ?

 どこから手をつけて良いかわからない、思考をめぐらせればよいかわからない、何から何まで謎だらけのミステリーだ。

 その「驚愕の事実」に行きつくための材料が、全編に散りばめられているのだが、物語自体が素直で読みやすく、無論面白いので、ミステリーということを忘れて入り込める。
 
 真山と樋口の純粋な友情、登山家同士のライバル心、プロ登山家の心構え、スポンサー争い・・・。
 
 そこに山がある限り、登らずにはいられない男たち。死への恐怖よりも、山への愛情が勝ってしまう男たち。そんな彼らの優しくも激しい人生劇場は、それだけで十分熱くなれる内容だ。何もミステリーでなくても良いのでは!?と、読みながら思ったほどだ。

 しかし、そんな「熱くなれる」内容だからこそ、最後の謎解きが生きる。
 真山がある「事実」に気づいた瞬間の場面は、読者も真山と同様、まさに霧が晴れたような気分になるだろう。

 そしてこんな思いが胸を去来し、涙がこぼれることだろう。
 純粋に山を愛し、山を愛する人間を愛していたからこそ、彼は二度死んだのだ・・・と。

 人間ドラマとしてもミステリーとしても、モヤモヤすることなくストレートに楽しめる一冊。
 ぜひとも映像化してほしいが、もしかするとそれはちょっと・・・難しい・・・かな?

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闇に香る嘘 下村敦史

 「時間はかかるかもしれないが、闇の中で座り込まず、光を探していこう」
(本文引用)
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 これは面白かった。方々で絶賛の声を聞いていたので、大きな期待を胸に読んだが、それをスコーンとはるかに上回る面白さだった。実に天晴れ、実に見事な作品である。

 本書は、2014年度、第60回江戸川乱歩賞受賞作だ。そういうわけで巻末に選評が載っているのだが、称賛の嵐の中このような言葉が目立つ。
 「タイトルは、本作品のコンセプトを語り過ぎている」「タイトルを何とかしてほしかった」
 その「何とかした」結果が、この「闇に香る嘘」というタイトル。元のタイトルは「無縁の常闇に嘘は香る」で、それが「内容を説明してしまっている」というのだ。
 まあ、確かにそうかもしれないし、「闇に香る嘘」のほうが素敵だと思うので改題して良かったとは思うのだが・・・そんなタイトルごときで内容がわかってしまうほど、このミステリーは甘くない。


 真実の扉が開いて、開いて、開いて、まだ開いて、もう次の扉はないかと思ったらまだ開いて・・・というように、とにかく驚愕の真相が次から次へと暴かれる。
 そして最後の扉を開けた後は、意外なほど爽やかな結末が待っている。そう、1枚目の扉を開ける前の時点では考えられなかったほどに。

 ちなみに作者下村敦史氏は、9年間で5度、乱歩賞の最終候補に残ったという。その末に栄冠を勝ち取ったミステリー。果たしてそのストーリーとは?

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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