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「楽園の真下」感想。ハリウッド映画にしたら全米震撼!自殺が頻発する島の正体とは?

評価:★★★★★

 俺は負けない。生存戦略に勝って、俺が生き残る。それが生物としての使命だから。
(本文引用)
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 映画関係者の皆さま、今すぐ動いてください。

 「楽園の真下」を映画化するために。

 ハリウッドでもいい。日米合同でもいい。

 映画化したら大ヒット確実。
 他の映画会社に取られないうちに、今すぐ「楽園の真下製作委員会」を発足しよう!

 昔懐かし「ジョーズ」や「キラービー」、「アリゲーター」級の「パニック映画史に残る傑作」になるだろう。

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荻原浩「二千七百の夏と冬」で泣きすぎて窒息しそうになりました。

評価:★★★★★

 何の努力もせずに手に入れられる国籍を誇ったって、自分自身は一センチも前に進めない。
(本文引用)
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  「二千七百の夏と冬」のレビューを見ると、いちばん多い言葉がこれ。

 「涙が止まらなくなった」

 です。

 そして下巻の最後の5行を読み、本当に涙がボロボロボロボロ。
 体の奥からあふれるように涙が出て、声も出せず、窒息しそうになりました。

 読み終えた今でも、最後のシーンが頭に浮かぶと、脳内でどこかのダムが決壊するおうに涙がドバーッと出てきます。
 ここ数年で、いちばん泣いた小説です。

 荻原浩作品といえば、直木賞受賞作「海の見える理髪店」でもおおいに泣かせていただきました。
 
 でも涙の瞬間最大量は「二千七百の夏と冬」の方が多いかも。
 これね、日本人じゃなくて西洋人で映画化するのなら、レオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットでやってほしいです。(あれ?ちょっとネタバレしたかな?)
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 主人公の佐藤香椰は新聞記者。このたび、縄文人の男性と弥生人の女性の人骨が発見され、取材をすることになります。





 人骨の男女の年齢は、まだ少年少女といったところ。
 でもよく見ると、どうやら互いに手を取り合っている様子です。

 三千年近く前に、いったい日本で何があったのか。
 人骨の主は、どんな人生を送っていたのか。

 香椰はかつての恋人に思いを馳せながら、縄文と弥生のロマンスについて取材を重ねますが・・・?

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ストロベリーライフ  荻原浩

評価:★★★★★

 何を為すために自分は生まれてきたのか。
 やっとわかった。
 三十七年かけて。

(本文引用)
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 荻原浩氏の、直木賞受賞後第一作である(直木賞受賞作「海の見える理髪店」のレビューはこちら)。
 
 最近、自分の中で「荻原浩の小説に感動できなくなったら、心のメンテナンスがいる」と考えるようになった。
 特にエキサイティングなドラマもなく、ユーモラスな文章で淡々とつづられていく日常。ネットに流れる刺激的な文章に慣れてしまうと、ややつまらなく思えてしまうかもしれない。

 しかし、そこで荻原作品を遠ざけてしまったら、それほどもったいないことはない。
 人間とは何か、家族とは何か、人生とは何か。荻原浩の小説は、そんなことを深く厳しく温かく教えてくれる。



 荻原作品に感動できなくなったら、それは刺激に毒されている証拠であり、自分の日常や人生をじっくりと眺めることができなくなっている証拠にもなる。
 だから、私は思う。荻原浩の小説に心を揺さぶられなくなったら、心のメンテナンスが必要だ、と。
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 主人公の望月恵介は、フリーのグラフィックデザイナー。広告代理店から独立して2年になる。最近、仕事の依頼がないことに焦りを感じている。

 そんなある日、実家の母親から電話がくる。父親が倒れたという。
 恵介は急きょ帰省し、農家である実家の仕事をしばらく手伝うことにする。

 そこで出会ったのは、イチゴの栽培。
 恵介はイチゴを育てながら、自分の生きる道を見出していく。
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 本書の面白いところは、ITと農業をきっちりと両立させているところだ。
 「グラフィックデザイナーが実家の農業を手伝う」と聞くと、すぐさま「パソコンに向かう仕事は否定し、自然と向き合う仕事を肯定する」という図式になりがちだ。

  しかし、この小説は違う。
 
 イチゴ農家としての仕事をきっちりこなしつつも、グラフィックデザイナーとしての腕もしっかり活かしていく。
 その2つがどのような相乗効果を上げていくか。それが本書の読みどころだ。

 また、恵介の家族をめぐる物語も、読んでいて非常に楽しい。
 恵介の仕事状況や家族関係に最大限の配慮をはらいながら、気丈に生きていく妻。
 恵介を家来のように扱いながらも、それぞれ弱みや悩みを抱える3人の姉たち。
 
 そんな家族たちの中で特に面白いのが、姉たちの夫衆だ。
 とにかく金勘定にうるさい男や、女遊びの尽きないチャラ男。
 恵介から見ると、かなりどうしようもない義兄たちなのだが、次第に溶け合っていく過程が何とも気持ちいい。
 人は互いのバリアを取り払って、自分の強みを生かして協力しあえば、何でも可能になる! そんな勇気をもてるストーリー展開だ。
 
 こうして改めて作品を振り返ってみると、荻原浩氏の小説も池井戸潤氏の小説に負けないぐらい「嬉しいマンネリズム」「様式美」を持っていることがわかる。
 何かをきっかけにして家族のありがたさを噛みしめ、自分の人生をうんと愛する。

 様々な題材で、そんなメッセージを変わらず送り続けてくれる荻原浩作品。
 自分の心がささくれ立っていないか、刺激ばかりを追い求めて足が地面から離れていないか。身近な人を愛せなくなっていないか。
 荻原作品は、そんな心のチェックシートに欠かせないのだ。

詳細情報・ご購入はこちら↓


海の見える理髪店  荻原浩

評価:★★★★★

きっと私はなんでも鏡越しに見ていたんだと思います。真正面から向き合うとつらいから。
(本文引用)
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 言葉が見つからない。この短編集を称賛する言葉が、どうしても見つからない。

 何て美しくて、優しくて、悲しくて、崇高で、気高い物語なのだろう。 今まで様々な小説を読んであふれた感情を全部かき集めたら、この本を読んだ時の気持ちにようやく追いつくだろうか。それぐらい、猛烈に心を動かされる一冊だった。

 この本が直木賞を獲ったら、私は直木賞を思いっきり見直すだろう。たとえ獲らなくても、私から何か賞を授けたい(相手は別に嬉しくもないであろうが・・・)。
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 本書は6篇から成る。連作短編といったものではなく、それぞれ完全に独立した物語だ。

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千の仮面をもつ作家 荻原浩さん ~「砂の王国」「明日の記憶」~

 作家って、すごいなあ・・・荻原浩さんの本を読んでいると、素直にそう思う。

 本を読む醍醐味は、いろんな人の人格になり、いろんな人生を歩めるということだ。
 そしてそんな思いをさせてくれているのは、当たり前だが、その本の著者である。

 「第1章 千の仮面をもつ少女」で始まる人気少女マンガがあるが、荻原浩さんは、まさに“千の仮面をもつ作家”であると思う。
 以前、荻原さんはコピーライターをされていたらしい。
 それは、世の中の不特定多数の人の目にとまるような簡潔な言葉を考え、さらにそれで何かを買うよう誘導していくという、非常に難しい仕事だ。
 そんな仕事をしていくにはやはり、変幻自在にあらゆる立場の人間になりきる力が必要なのだろう。

 いちばん最近読んだのは「砂の王国」
 ホームレスが一念発起して宗教を興し、富と名声を得て、さらにその先(←ハリウッド映画並みのスピード感と恐怖!)までを描いた作品だ。
 とにかく場面ごとの臨場感がすごい。いや場面ごとと言うより、人間ライフサイクルごと、とでも言った方が良いだろうか。

 路上で食料や小銭漁りに目をぎらつかせる導入期以前、辻占いで人寄せをする導入期、そしていよいよ多くの人を言いくるめて富と人望を増やしていく成長期、会員数が増えすぎてポロポロと離反者も出てくる成熟期、そして騙したつもりが騙されて、トコトンまで落ちていく衰退期・・・。

 どれも、人間がみせる非情さのあまりのリアルさに顔をしかめつつ、なぜか気がつけば、登場人物を応援しながら読んでしまう。





 (それにしても、「砂の王国」に出てくる人間たちの心理的な操られ方は凄まじい。読んでいる私まで、ピンと糸を張ったマリオネットになった気分だった。危ない危ない・・・。)

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 そして、渡辺謙さん主演で映画化もされたベストセラー「明日の記憶」。

 広告マンとしてバリバリ働いていた男性が、突然「若年性アルツハイマー」に侵されるというストーリーだが、その主人公や家族たち、そして周りを囲む社員たちの心の揺れといったら・・・荻原さん!何でここまで他人になりきれるの?と胸倉をつかんで聞きたいぐらいであった。

 なかでも印象的だったのが、主人公と妻が、拭っても拭っても拭いきれない絶望と悲しみを、お互い相手に悟られようとしまいとする場面の数々であった。



 妻が寝入ったのを見計らって、いくらでもいくらでも涙を流せるように浴室でシャワーを浴びる主人公。
 脳に良いといわれる食材を使って毎日夕食を作るが、それは「頭に良い食事」を食べさせること以上に、限られた時間を少しでも長く過ごしたいからと、夫の帰りをいつまでも待つ妻。

 残り時間の減少が加速していく中で、少しでも充実した時をもとうとする彼らの姿には、胸がおしつぶされそうな思いがした。
 しかし、それとともにどこかさわやかな気持ちになれる。

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 いずれも、憎むべき人物や悲しむべき設定なのに、なぜか憎みきれず、また悲しみだけでなく喜びも感じる。

 それはなぜか。

 それは、やはり荻原さんが、本当に登場人物にすべてなりきって書いているからだろう。

 人物の描き方が通りいっぺんではない。
 人間、一人ひとりこんなに汚い面もあるけれど、こんなに素敵なところもある(逆もまた然り)。
 こんな目に遭ったら、辛いこともたくさんあるけれど、時に嬉しいこともある。
 ・・・そんなことを、実にきめ細かく描いている。

 たとえば、主人公にとって、無神経で日頃あまり関わりたくないと思っている人物も、いざとなると(無神経さ故の?)カラッとした物言いが、鬱々とした主人公の心を救ってくれる。
 若さだけが自慢で、上司に敬語も使えない若い連中が、(若さ故の?)純真さで、困っている主人公を全力で助けようとする。
 また逆に、この人は信じられる!と思った人間が、まさかというときに、とんでもない裏切り行為に出る。

 つまり、「この人は良い役」「この人は悪役」という縛りがない。

 すべてが、
 「小説には主役も悪役も脇役もヒロインもいない。登場人物全員が、この人は●●さんという、世の中で唯一無二の人格をもった人間」。
 それだけをベースとして描いている。
 一人ひとりに公平に人生のドラマがある。だから荻原さんの小説を読んでいると、私自身も登場人物の気持ちになり、彼らの数だけ涙を流してしまうのだ。笑顔になってしまうのだ。そして、応援したくなってしまうのだ。

 今日もまた、人間の素晴らしい面・汚い面と向き合いながら、1日過ごすこととなるだろう。
 しかし、荻原さんの作品を思い出し、「それでいいのだ」と笑いながら、一歩一歩、歩いていこうと思う。


プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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