「速すぎるニュースをゆっくり解説します」池上彰。世界ニュースを頭に入れるなら、まずはここから!

評価:★★★★★

 かたや「美しい国、日本を、取り戻す」、かたや「Make America Great Again」
(本文引用)
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 平成のラストスパートに、世界情勢を一気につかめる一冊。
 「つかむ」と言っても、全て現在進行形の出来事なので、つかんでは逃げるウナギのようなものかもしれないが。

 でも本書を読めば、日々進行していく世界ニュースが、グッと面白くなる。
 
 そもそも世界情勢のニュースをスルーしてしまうのは、「面白くない」から。
 「面白くない」と感じるのは、「事の重大さ」がわからないからだ(私がそうなのだが)。
 世界のニュースに興味を持ち、グワッと把握するためには、まず「事の重大さ」を知るのが肝心なのだ。

 本書は、世界のさまざまな出来事について、スタート地点からゆっくり解説。

 
 「なぜエルサレムが首都に認定されたのが大問題なのか?」
 「なぜ難民受け入れが、世界的な問題になっているのか?」
 「なぜ連日、EU離脱が報じられるのか?」

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 そんな「なぜ?」は、起源にさかのぼって考えれば一発解消。
 池上流、「そこからですか?」の噛んで含めるような解説で、一気に「事の重大さ」がわかってくる。

 世界のニュースに興味を持ちたい、スルスルと理解したい・・・そう思う方に、本書の「ゆっくり解説」はおすすめだ。
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■「速すぎるニュースをゆっくり解説します」内容


 本書は大きく7章構成。
 アメリカのトランプイズムから始まり、EU崩壊、ロシアの新・帝国主義、イスラム国、中国の迷走、韓国・北朝鮮の今後、そして日本の安倍イズム・・・。

 分断、独裁、流出・流入・・・それらに隠れた問題点を、「世界の成り立ち」からじっくり解説。

 半藤一利やエマニュエル・トッド、出口治明との対談も交えて問題点を探り、世界の未来を占っていく。
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■「速すぎるニュースをゆっくり解説します」感想


 本書の魅力は「そこからですか?」から読めること。
 いわば神社のご利益を、古事記から知るようなもの。
 御祭神の性格や人間関係を神話から知ることで、よりご利益が腑に落ちる・・・そんな感覚を時事問題に持ち込んだ本だ。

 たとえばエルサレムの首都認定問題。
 池上氏はまず、トランプ大統領の家族関係から「アメリカ大使館移転」について解説。
 
 さらにそもそも、「なぜエルサレムは聖地なのか」を基礎からゆっくり説明。
 エルサレムの特徴から、「特定の国の首都」としてこなかった理由・・・つまり「特定の国の首都とすることが、どれだけ大問題であるか」を説いていく。

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 また本書は経験者の生の声から、世界情勢がわかるのも魅力。
 移民問題では、フランスとベルギー、あなたならどちらに行く?から言及。

 なかでもエマニュエル・トッド氏の経験談は、ベルギーの在り方の是非を問う興味深いもの。

 かつてオランダ語地域でカフェに入ったところ、ボーイから完全に流暢なフランス語で「あなたがフランス人だから、フランス語で接客しますが、ベルギー人でしたらそのようなサービスをするわけにはいきません」と言い放たれました。


 ベルギーは自国の文化を押しつけないため、移民にとって居心地が良いように見える。
 しかし実態は強烈な分離社会で、そこに移民がもっと入っていったら・・・と警鐘を鳴らす。

 「そこからですか?」と言いたくなる基礎の基礎から解説し、しかも生身の体験も交えていく。

 だから本書を読めば、イヤでも世界の大問題に興味が持ててくる。
 そしてイヤでも、世界の大問題がイヤでも頭にスルスル入ってくるのだ

 世界問題が面白くなれば、日本の大問題も見えてくる。

 終盤、池上氏と出口治明氏との対談では、思わずゾクッ。
 確かに安倍首相と仲がいいのって・・・うん、その人たちだよね・・・。
 ということは・・・?

 ニュースってわかりやすく知れば知るほど、恐怖が大きくなるんだな。
 読み終えた途端に・・・胃が痛くなってきた。
                                                                     
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朝倉かすみ「平場の月」感想。こんなに素敵な恋愛小説、初めて・・・。映像化絶対希望!

評価:★★★★★

 「おまえがどんなにおまえ自身を嫌っても、おれ、おまえが大事なんだわ。なんかこう、どうしようもないんだわ。おまえは、おれが一緒になりたいと思うようなヤツじゃないと言ったが、それ、おまえが決めることじゃないだろうよ、ちがうか?」
(本文引用)
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 今まで読んだ恋愛小説で、間違いなく第1位。
 2位以下の小説の姿が見えないぐらい、断トツ1位の・・・もう、ホントにホントに何て言っていいかわからないぐらい、頭も顔もグシャグシャになりそうな素敵な小説だった。

 今後、「平場の月」をしのぐ恋愛小説と出会えるか、かなり不安。
 何かもう、次以降に読む小説が全部消化ゲームに思えるぐらい、衝撃的な作品だった。

 「平場の月」、ぜひぜひ映像化してほしい。
 映画だったら絶対、劇場から出る際、涙ボロボロだろうなー。
 ドラマだったらもう、「おしん」並みに張り付いて観るかも。

 もし映像化されたら、涙で絶対に落ちない化粧品を買いそろえてから観たいので、業界の方、なるべく早くお知らせください。

 は~、しかし泣いたわ・・・。まいった・・・。


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■「平場の月」内容



 主人公・青砥は50代の男性。
 バツイチで、成人した子どもが二人いる。

 ある日青砥は、病院の売店で中学の同級生と再会する。
 同級生の名は須藤葉子。
 実は青砥はかつて、須藤に好意を持っていた。
 
 噂などに流されず、わが道を行く信念を持っている・・・青砥は、そんな須藤の「太さ」に惹かれていたのだ。

 青砥と須藤は共に「病院で精密検査が必要」とわかり、意気投合。
 頻繁に会うようになるが、二人の日々に病魔が黒い影を落とす。

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 検査の結果、青砥は「異常なし」と判明。
 一方須藤は「悪性」と判明。

 進行性の大腸がんで手術と抗がん剤治療に入り、人工肛門の装着へ。

 須藤は体力を回復し、パートに復帰。
 青砥はいよいよ須藤に、結婚を申し込むのだが・・・?
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■「平場の月」感想



 「あの人が好きで好きで仕方がない。誰が何と言おうと一緒にいたい。でもその気持ちを、どうやって伝えたらよいのかわからない」
 
 そんな悩みを持ってるなら、まず相手に本書をプレゼントしよう。
 
 もし相手がこの本を読んでくれたら、それで全て済む。
 あとは何もしなくてよい。

 なぜなら本書には、「人を心から好きになる、愛する」ということが全部、本当に全部、寸分漏らさず詰め込まれてるから。
 
 「理屈抜きで誰かを愛する」という気持ちは、本書以上でも本書以下でもない。
 「平場の月」に書かれているとおりの気持ちが、そのまんま、「人を心から愛する」ということだ。

 相手が読書好きでないと意味がないかもしれないが、もし読んでもらえたら、相手には必ずあなたの気持ちが丸ごと伝わるはず。
 結果はどうあれ、絶対に後悔しない告白ができるだろう。
 そして結果はどうあれ、受け取った相手も感激することは間違いない。

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 とにかくこの「平場の月」、青砥の気持ちがストレートすぎて、どうしようもなく泣けるのだ。

 青砥と須藤は時として、噂や詮索好きの女性に翻弄されそうになる。
 しかし青砥は決して負けない。
 ただただ須藤だけを一直線に見つめて、雑音に惑わされないように須藤を守る。

 その姿の、何と崇高なことか。
 「誰かを真摯に愛する」という気持ちは、何と美しいものか。

 だからもし、すごく好きな人に気持ちをまっすぐ伝えたい時は、本書を贈ってみてほしい。
 
 あとは何もいらない。
 これ一冊で「私はあなたを心から愛しています」ということが過不足なく伝わるはずだ。

 ・・・それにしても、恋愛小説でここまで泣いたのは初めてかも。
 あまりにも感動して、夕食の時、夫に本書について熱く語ってしまった。
 
 冒頭でも書いたが、ぜひぜひ映像化してほしい。
 想像するだけでも・・・また涙が出そうだ。

 ※というわけで勝手にキャスティング

 ●青砥:佐藤浩市
 ●須藤:真矢みき
 ●ウミちゃん:竹内都子
 ●みっちゃん:佐藤仁美

                                                                     
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「めんそーれ!化学」で理科・化学が一発で好きになる!牛乳・お醤油は電気を通す?

評価:★★★★★

 「理科って本当は、くらしの体験に結びついて、その理由を明らかにしたり、法則性と結びつけたりするものじゃないかな。くらしの体験に結びつく話をすると、夜間中学の生徒は“ああ”っていうんだ」
(本文引用)
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 今さらながら、理科・化学を好きになりたい、得意になりたいという欲求がムクムク。

 子どもが理科・化学について、何か質問をしてきた時、「それはね、こういうことなんだよ」と分かりやすく言えたらかっこいいな、きっと子どもも理科が好きになるだろうな・・・と単純に思ったのだ。

 そこで「これだ!」と目にとまったのが「めんそーれ!化学」。

 副題が「おばあと学んだ理科授業」。
 このサブタイトルから、ものすごーく「日常に根差した化学を学べる」と判断。

 読んだところ、全く期待を裏切らない・・・いや、期待以上に「理科・化学って面白い!」と思える内容だった。

 これで子どもが、理科的な質問をしてきても大丈夫。


 「なぜ濡れた手でコンセントを触っちゃいけないの?」
 「牛乳やお醤油って電気を通すの?」
 「ママ、炭水化物抜きしてるけど、そもそも炭水化物って何?」
 「コカ・コーラゼロって甘くないってこと? なぜみんな喜んで飲んでるの? ゼロでもおいしいの?」

 そこで本書の実験や解説を伝えれば、あら不思議。

 「理科ってメチャクチャ面白い!」という魔法にかかってしまうはずだ。
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■「めんそーれ!化学」内容



 本書の舞台は沖縄。
 珊瑚舎スコーレ夜間中学での、理科授業だ。

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 生徒の多くは60代から70代。
 戦争の動乱のなか、「学校に行けない」「労働力に駆り出された」などの事情で、中学に行けなかった者が中心である。

 授業では、理科を実験中心に展開。
 生徒たちは学校こそ行けなかったものの、人生経験は実に豊富。

 ロウソク、金属、電気、芋、石鹸・・・さまざまな化学実験を、子どもの頃のお手伝いや、戦時下での生活の知恵と結び付けてどんどん知識を吸収していく。
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■「めんそーれ!化学」感想



 本書を読み、つくづく思った。
 「理科・化学はビックリするほど生活と密着している」と。
 
 そう思えることが、夜間中学の醍醐味。
 いわゆる普通の中学・高校の授業だと、分子・原子という話が先立ち、なかなか「暮らし密着型」の話にならない。
 だから理科に対して、苦手意識を持つ子が多いのだろう。
 
 しかしこの夜間中学の授業では、「理科と生活が結びつく話」がポンポン出てくる。
 
 アルコールの蒸留では、生徒たちから密造酒づくりの話が飛び出し、アルコールの本質にグイグイ。
 ロウソクの授業では、子ども時代、ランプを掃除するお手伝いをしたことから、「燃料の実態」に迫る。
 グルテンの回では、ガジュマルの葉でガムづくりをした思い出を語り、 ラードや牛乳、チーズ作りの話から「油脂」の秘密を解き明かしていく。

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 自ら飲み物・食べ物を作り出し、家のお手伝いを必死にしてきた生徒たち。
 彼らの人生経験は、普通の理科授業を無限にふくらませる。
 そして知る。
 私たちの暮らしは、理科・化学なしでは成り立たないことを。

 それを心の奥から知ることができるのが、この理科授業。
 読めば読むほど「私もこんな授業を受けたかった」「こんな授業を受けていたら、理科・化学が猛烈に好きになっただろうなぁ」と、ため息が出てしまう。

 さらにこの授業、生徒たちの発想が実に豊か。
 「電気を通す液体」の授業では、先生も驚きの提案が続々。
 
 自由な発想に基づく実験で、教科書には載ってない真理を見つけ出すことができる。
 
 「ああ勉強って、教科書を学ぶだけではないんだな。学びに制限なんてない。想像の翼を広げると、どこまでも深い学びが得られるんだな」と納得した。

 「子どもを理科好きにするなら、まず私から」と思い読みはじめたが、まずは第一作戦成功!
 「めんそーれ!化学」を読んだら、もう身の回りの「理科あれこれ」がキラキラ見えて眩しいほど。

 早く子どもが「●●ってどういうこと?」と聞いてこないかなー。
 いや私に聞いてくるより先に、本書を読んじゃうかも。
 どっちにしてもきっと、「理科・化学って面白い!」という結果になるのは間違いない。
                                                                     
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浅田次郎「姫椿」。ミステリーじゃないどんでん返しに二度読み、三度読み。

評価:★★★★★

 「それにしても愕いた。もっとも、トラブル・メーカーと異名をとった男の、いわばファイナル・ステージですから、そのポテンシャルの大きさといったらあなた、人間わざとは思えませんでしたよ」
(本文引用)
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 「浅田次郎さんって、本当に作家の名人だなぁ・・・」

 「姫椿」を読み、今さらながら心の奥からそう思った。
 本書に登場する「ある男」も、「人間わざとは思えない」行動をとる。

 しかし浅田次郎さんこそ、人間離れした業師。

 思わぬ結末に「ええーっ!?どういうこと?」と頭が混乱。
 二度読み、三度読み、四度読みし、見事にはさみ込まれた伏線に、思わず戦慄。

 「う、うまい・・・」と、北島マヤの演技を見た審査員(@「ガラスの仮面」)のような声を出してしまった。


 「どんでん返し」や「読者をだます」のは、ミステリーだけではない。
 フツーにありそうな日常ドラマのほうがよほど、人を頭から食ってしまうのだ。
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 「姫椿」は8編から成る短編集。
 
 飼い猫を喪い、新たな幸せを得ようともがくが、どうしても「誤った幸せ」を求めてしまう女性。
 死に場所を捜し求める間、運の良いタクシー運転手と出会う社長。
 堅実な商売で成功するが、誰にも言えない秘密を抱え、とうとう旧友に吐き出す者。
 飛行機で隣になった男性に、自暴自棄気味にサラリーマン人生を語る男性。
 外で倒れていた女性を介抱したところ、とんでもないトラブルに巻き込まれる紳士・・・。

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 どの話の主人公も、大きな後悔を携えながら、人生の大海を何とか泳ごうと必死。
 時に「このまま溺れてもいいかなあ」とヤケになるが、もがき苦しみながら生きている。

 さて、こう書くと「どこにどんでん返しなんてあるの?」と思われるかもしれない。

 確かに「どんでん返し」と言えば、ミステリーの専売特許。
 しかし本書を読んでいたら、少し考えが変わった。

 「日常の中にこそ、信じられないようなどんでん返しがあるのでは・・・?」

 そう強烈に思ったのは、第5話「トラブル・メーカー」。
 ある男性が飛行機でオーストラリアに向かう際、隣席の男性に話しかけられる。

 浜中と名乗る男は、会社の早期退職制度を使い、息子が住むブリスベンへ。
 妻とは別れ、娘は妻の側についたという。

 浜中は同期の仙田という男について、とうとうと語る。
 同期のよしみで、浜中は仙田と懇意にするが、実は仙田はとんでもないトラブル・メーカー。
 
 借金や女性関係で問題がつきず、ついに浜中や同部署の女性社員にもとんだ迷惑をかける。

 そしてついに仙田は、浜中の人生に決定的なダメージを・・・。

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 この結末は、全く予想できないもの。
 ラストを読めば十人が十人、「えっ? これ、どういうこと? えっ? えっ?」と思わず読み返すだろう。

 そしてよ~く読むと、「どんでん返し」をにおわす言葉があちこちに・・・。
 う~ん、まいりました!
 浅田次郎さん、やっぱり名人だわ・・・と、巨匠の手腕に深く深~くうなった。

 その他の物語も、ちょっとした「驚きの結末」が。
 人生、驚きの結末があるからこそ面白い。
 だから生きるのを、あきらめてはいけないんだろうな・・・と、強く勇気づけられた。

 ミステリー顔負けのどんでん返しと、浅田次郎作品らしい、何とも言えない温もり。

 名人作家の技が凝縮された一冊は、一食抜いてでも読む価値あり!だ。
                                                                     
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「かたみ歌」感想。「愛する人と会えなくなった。忘れるべき?」と思ったらおすすめ。

評価:★★★★★

誰かを護ろうという意思を持つ者は、きっと力強い姿でこの世に帰ってくる。
(本文引用)
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 愛する人と会えなくなった時、ふとこう思うことはないだろうか。

 前に進むには、忘れないと。

 しかし前に進むには、本当に忘れないといけないのだろうか。
 逆に、「忘れないからこそ前に進める」ともいえるのでは?

 もしあなたが、愛する人と会えなくなり、「忘れられない」と悩んでるなら本書がおすすめ。

 会えなくなっても、その人を思うことで、前に大きく踏み出せる。

 「かたみ歌」は、そんな励みをくれる短編集だ。


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  「かたみ歌」は7編から成る短編集。
 
 すべて、永遠の別れ・・・「死」にまつわる物語だ。

 ラーメン屋で起きた強殺事件、少年の命を脅かす謎の貼り紙、どうしようもない夫に悲観して無理心中を図る母親、詩の才能を夫につぶされ自死した女性・・・。

 こう書くと「ミステリー小説?」と思うかもしれない。
 「じゃあ、ホラー小説?」と思う人もいるかも。

 しかし本書はミステリーでもなくホラーでもなく、純粋なヒューマンドラマ。
 「死者と生者との交流」が描かれてるため、ファンタジー要素はあるが、ただただ純粋に「誰かを愛する」ということを描き切った人間ロマンだ。

 特に私が好きなのは、第一話「紫陽花のころ」。
 舞台は下町の商店街。
 ある若い男女がアパートに引っ越し、同棲を始める。

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 男は近隣を散策するが、そこである事実を知る。

 近所のラーメン店で強盗殺人事件が発生。
 殺されたのは店の主人で、妻と、重度の障害のある娘が遺されたという。

 男が現場周辺を歩いたところ、何やら不審な人物を発見。
 犯人はまだ捕まっていない・・・ということは、現場に戻ってきた犯人なのか?

 事実が露わになるにつれ、男女の仲にも変化が現れて・・・?

 本書の帯には「涙腺崩壊」と書かれているが、私は「紫陽花のころ」を読み、本当に涙腺が崩壊した。

 その理由は「誰かを思いつづけるということは、これほどまでに尊いものなのか」と頭を殴られたような衝撃を受けたから。

 そして「愛する人と会えなくなっても忘れる必要はないのだ」と、心の底から励まされたからだ。

 人が死ぬと、もう実際に姿も見えず声も聞けない。
 成長する姿も見られず、ともに何かを楽しむということはできなくなる。

 だからやはり、死は絶対的に悲しい。

 しかし時として死者は、生者に「生きていた時以上の何か」をくれる。
 生きている間にはわからなかった過ち、愚かしさ、幼さに、死者は気づかせてくれる。
 愛する人を置いて行った悔しさ、無念を心に抱えながら、生者をいつまでもいつまでも見守ってくれる。

 「紫陽花のころ」は、そんな「愛の永遠」を教えてくれるのだ。

 さらにそんな「永遠の愛の尊さ」が、若い男女の人生に一撃をくらわすラストが見事。

 私はその衝撃に、またまたはじかれたように涙が出た。

 死者は永遠に消えたわけではない。
 死んだからこそわかる真実を、生きる者に教え授けてくれる。
 現世に生きる「愛する人」を忘れることなく見守り、正しい道に誘ってくれる。

 死者はそんな役割を、永遠に担ってくれるのだ。 

 もしも今、「大切な人を忘れられず前に進めない」と悩んでるなら、ぜひ「かたみ歌」を。

 無理に忘れる必要はない。
 心に思いつづけることで、前に進めることもある。

 本書を読み、あなたがそう思えるようになった時、相手もきっと遠くで、あなたに笑顔を向けているだろう。
                                                                     
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「かたみ歌」を読んでから、この2曲を聴いたらますます涙が・・・。


「怖いのは嫌いだけどミステリーが読みたい!」という人は「先生と僕」「僕と先生」の同時買いがおすすめ。

評価:★★★★★

「やっぱ、日常の謎って意地悪だなあ」
(本文引用)
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 ミステリーは好きだけど、残酷なのは苦手・・・。
 そんな方には、「坂木司ミステリー」が断然おすすめ。

 私自身、最近、猟奇的なミステリーが読めなくなってきた。

 若い頃は連続殺人ものとかドキドキしながら読んでいた。
 しかし今は、安易に遺体とか殺人とかが出てくると、ちょっとゲンナリ。
 年をとると、「死を軽く扱わないでほしい」みたいな気持ちになるのかもしれない・・・。

 その代わり、今好きで好きで仕方ないのが「人が死なないミステリー」。
 日常生活のちょっとした謎から、逮捕するほどではない(だけど見過ごせない)犯罪が起こる。

 そんな「身近なミステリー」が、今は読んでてひたすら楽しい。

 というわけで、坂木司さんの本を一気に二冊紹介。

 ストーリーは全て「えっ? そんなところにミステリーが?」と驚くものばかり。

 半径100m以内で起きそうな“事件”だから、ある意味、猟奇殺人より刺激的。
 
 「ミステリーで怖い思いはしたくない。ミステリーの面白い部分だけもらって、楽しく脳を活発にしたい」
 「自分も名探偵気分を味わいたい」



 
 そんな「プチ名探偵願望」があるのなら、坂木作品一気読みがおすすめだ。
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■「先生と僕」「僕と先生」あらすじ■



 「先生と僕」「僕と先生」の主人公はタイトル通り、先生と僕の2人組。

 1人は男子大学生・伊藤二葉。
 顔はフツーで、疑うことを知らないノンビリタイプ。
 やや鈍くさいが、「5秒見れば何でも覚えてしまう」という特技を持っている。

 もう1人は男子中学生・瀬川隼人。
 ジャニーズ系のイケメンで、アルカイックスマイルで人々を悩殺。
 家は裕福で頭も切れるという、非の打ち所がない少年だ。

 二葉は隼人の家庭教師となるが、二人はいつしかコンビで「身近な事件」を次々解決。

 書店の雑誌に挟まれる、謎の付箋。
 火災を起こしたカラオケ店から、忽然と姿を消した客。
 市民プールで謎の暗号を書きつける人物。
 バレンタインのチョコレートフェアで、代金を預かったまま戻らないスタッフ。
 就職活動でエントリーシートが紛失!
 味は良いが、どこかイメージと違う食事を出すレストラン。
 バーベキューで消えた牛の串焼き・・・。

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 さて、犯人はなぜそんなことをしたのか? してしまったのか?

 二葉と隼人は事件を解明しながら、「人間」の奥深さをひしひしと知っていく。

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■「先生と僕」「僕と先生」感想



 このシリーズのコンセプトは、とにかく「怖くないミステリー」。
 人が死なない、人を脅えさせない、警察がほとんど出てこない異色のミステリーだ。

 何しろ主人公の二葉君が、とんでもない怖がり屋さん。
 そんな彼が事件と向き合うわけだから、当然「怖くない話」ばかりなのだ。

 しかし本書に収められている物語は、猟奇殺人以上に恐ろしい。
 なぜならどれも、いつ自分が巻き込まれてもおかしくない事件だからだ。

 本書の事件の当事者は、罪をほとんど自覚していない。
 いや自覚していないどころか、自分の罪を正当化しながら生きている。
 一言でいうと「身勝手」なのだ。

 よく考えると、日常に潜む謎は「身勝手な人・非常識な人」が発端となり、引き起こされることが多い。
 
 「なぜこんなところに、こんな柵があるんだろう?」
 「なぜ今年から、こんな規則ができたんだろう?」
 「なぜこの病院、受付時間が変わったんだろう?」
 「なぜこの棚、位置が変わったんだろう?」

 そういう謎は、「一部の人の迷惑行為」がきっかけであることが多い。

 「先生と僕」「僕と先生」に出てくる事件は、そんな現実をあぶり出している。

 だから猟奇殺人より怖い。

 気がつけば、自分がとんでもない罪を犯しているかもしれない。
 明日にでも、自分がとんでもない犯罪に巻き込まれるかもしれない。
 
 そんな気がして夜も眠れなくなるのだ。

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 よって本書は怖くないけど、ブルッと震えるミステリー。
 他人事とは思えないから、怖くないのにメチャメチャハマれる。
 そして「あの張り紙の謎がわかった私、もしかして名探偵!?」なんて夢まで見れてしまうのだ。

 「ミステリーを読みたいけど、怖いのは苦手・・・」
 「怖いのは嫌いだけど、謎解きは好き」

 そういう人は、ぜひ「先生と僕」「僕と先生」の同時買いを。

 えっ? 一冊ずつじゃダメかって?

 う~ん、一冊ずつでもいいんだけど・・・「先生と僕」を読んじゃったら自然と「僕と先生」も読みたくなることに。

 実際私、「先生と僕」を読んだ翌日に「僕と先生」を読破。
 読む手が止まらなかった身としては、「別々に買おう」なんて・・・残酷すぎて言えない。
                                                                     
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有栖川有栖「こうして誰もいなくなった」は最高に楽しいミステリーの遊園地!あの誤植の意味は?

評価:★★★★★

「はは、こいつは思ったより面白い。出題者というのは愉快な立場ですな。自分だけが正解を握っているというのは優越感をくすぐられる」
(本文引用)
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 帯に「有栖川小説の見本市」と書かれているが、見本市というより宝箱、いや遊園地といったほうが良い。

 一瞬で終わるけど心臓バクバクのフリーフォール。
 最初から最後まで「どうなるんだろう?」とドキドキするお化け屋敷。
 夢か現かわからないイリュージョンの部屋・・・。

 2ページで終わるミステリーもあれば、100ページ超の奇怪な話も。

 短編集は「全て均質なものが望ましい」と思っていたが、本書を読んでガラリと変わった。

 量もタイプもバラッバラな短編集は、とてつもなく面白い。
 そしてとてつもなくお得感があるのだ。

 こういう短編集を見せられちゃうと、もうね、「やっぱり巨匠は違うな」とただただ拍手。
 超ベテラン作家だからこそできる、ミステリーの遊園地。

 
 無限に広がるミステリーの波で、一日中飽きるほど遊ぶことができた。
 幸せだぁ!
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 本書に収められてるのは、ミステリーばかり14話。

 日常のなかで「ありそうな謎」から、日常では「とうていあり得ない謎」まで、さまざまな謎が満開だ。

 なかでも私が好きなのは、第1話「館の一夜」、第11話「本と謎の日々」、第12話「謎のアナウンス」。

 「館の一夜」は、山中に迷ってしまう男女の物語。
 カーナビ通りに走って来たのに、二人はすっかり迷ってしまい、仕方なくホテルに泊まることに。
 恋人同士ではないため、別々の部屋に宿泊したが・・・?

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 「本と謎の日々」は、書店で起きる「納得できない謎」をつづったもの。
 同じ本を2冊買ってしまい、返品に来た客。
 しかし客は、店に「これから気をつけてね」とクレーム。
 なぜ客は、自分の不注意にも関わらずそんなことを言ったのか?
 またある日には、店のポップが次々紛失。
 書店には、実にいろんなお客様が来るようで・・・。

 そして「謎のアナウンス」は、ある男性がデパートに行くたびに、おかしいアナウンスを聞くことに。
 なぜ彼がデパートに行くと、おかしいアナウンスが流れるのか?

 どの物語も、読めば「あ~、なるほど納得!」と膝をバチン!
 日常生活は、人の数だけミステリーがあるんだなぁと思わず笑いがこみあげてくる。
 
 本書を読んでから、デパートや書店に行くと、風景が違って見えてくる。
 そして手に取った本を、隅から隅までグルッと観察したくなる。
 本好きにとっては、ますます本が好きになっちゃう「目の毒」のようなミステリーだ。

 さらに本書をおすすめしたいのは、「好きな人に振り向いてもらいたい人」。
 謎に巻き込まれるのは、「謎を知らない人」ばかりではない。
 自分で謎を作ってしまえば・・・(これ以上はネタバレなので略)。

 本書を「ミステリーの遊園地」と言ったが、本書を読めばきっと、好きな人と遊園地に行けるはず。
 そしてもっと仲が深まるはず。

 何しろ本書には、「人を一日中飽きさせないコツ」がギッチリ詰まっている。

 ミステリーを楽しみたい、日常を楽しみたい、そして好きな人を楽しませたい。

 そう切に願うなら、「こうして誰もいなくなった」はおすすめだ。

 ちなみに私、本書のなかで一箇所、誤植を見つけてしまった

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 これって初版ならでは?
 「本と謎の日々」を読者に実体験させる試み?
 
 あの書店に現れた客なら、「これから気をつけてくださいね」と言うところだろうか。
 私はむしろラッキーと思い、大切にとっておくつもりだが、本当のところどうなんだろう?
                                                                     
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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
仕事・家事・育児の合間に文字を楽しむ、兼業主婦の備忘録です。
本の評価は以下のとおり(2015年10月~)
★★★★★=読むと一生幸せでいられます。
★★★★☆=読むと1年間幸せでいられます。
★★★☆☆=読むと1週間幸せでいられます。
★★☆☆☆=これ以下の本は載せません。

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