2018年1月公開!映画「ミッドナイト・バス」の原作は、読む人を朝へ運んでくれる名作!

評価:★★★★★

「暗がりは抜けたんだよ。たった一人で、もう走ってこなくていいんだ」
(本文引用)
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 2018年1月から公開される映画「ミッドナイト・バス」原作。
 この映画、キャスティングが見事です!

 主演が原田泰造さんで、別れた奥様役が山本未來さん、現在の恋人役が小西真奈美さんなのですが、どれも「ピッタリ~!」と悶絶してしまいました。

 今、注目の女優・葵わかなさんも出演されるとか。

 公開されたら、ぜひ観たいです。

 この「ミッドナイト・バス」は山本周五郎賞と直木賞の候補となった小説。



 受賞は逃したものの、1人ひとりの人間が持つ強さと弱さ、優しさと残酷さという二面性が情感たっぷりに描かれていて、「ああ、人間ってこうかもしれないなあ。だから人間って人生って面白いのかもしれないな」としみじみと読みふけりました。
 でも、こうも思うのです。

 人間がもつ真実がたった1つなら、どんなに楽に簡単に生きられるだろうって。

 誰が人間をこんなに複雑にしてしまったのだろう。辛いのに!なんて、ちょっと地団駄ふんでしまいました。

 そう思わせるほど、この「ミッドナイト・バス」が面白かったということ。

 人生ってなかなかうまくいかないし、暗い道ばかりのような気がするけれど、深夜バスのようにとにかく前に進むよりほかないんですね。
 朝が来ても来なくても歩き続けていれば、漆黒の空が濃紺になり、やがて白み始めてくるだろう・・・。

 そんなことを信じさせてくれる小説でした。
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■「ミッドナイト・バス」あらすじ



 主人公の高宮利一は深夜バスの運転手。

 成人した息子と娘がいます。

 妻・美雪とは16年前に離婚。
 利一の母親にさんざん泣かされ、家を飛び出していったのです。

 ある日、利一が担当するバスに美雪が乗車。
 利一は若い恋人がいながらも、元妻との再会に心を揺らします。

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 一方、息子と娘も人生につまずいている様子。
 特に息子はアレルギー性の湿疹が悪化し、背中が血だらけに。

 心に何か、深い悩みを抱えているようです。

 利一と美雪、恋人の志穂、そして息子と娘・・・一度壊れてしまった彼らは、もう一度元に戻ることはできるのでしょうか。

「どうして僕らはもっと早く・・・・・・ばらばらになる前に、うまく立ち回れなかったんだろうね」

 彼らは、人生のミッドナイト・バスから抜け出すことが果たしてできるのか・・・。
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■「ミッドナイト・バス」感想



 この小説は、「自分がマイノリティかもしれない、異端かもしれない」と悩んでいる方におすすめです。

 たとえば家庭環境が所謂「普通」と違っていたり、恋愛や結婚、出産の形が「普通」と違っていたり。

 人間、ライフスタイルやライフステージが少しでも規格からはずれていると、ついコンプレックスを抱きがちです。

 でもこの小説は、そんな方々を日の光の下に運んでくれます。

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 一見、世の中のほとんどの人は「普通」で「常識的」な家庭を作っているように見えます。

 でも本書を読むと、「普通で常識的な」家庭なんてまず存在しないことがわかります。

 そして、自分が普通で常識的な家庭を思っている人間ほど残酷であることも。

 たとえば本書で印象的なのが、利一の娘・彩菜の結婚話。

 彩菜の恋人は、自分の家庭を普通で常識的と信じて疑わない青年。
 彩菜が男手ひとつで育てられたことと、実母を憎んでいることを全て受け止めて彩菜を愛しますが、そこにはどこか真剣味が感じられません。

 「普通で常識的(と自分では思っている)な彼は、異端であることにコンプレックスを抱いている人に対し、あまりにも鈍感です。

 一方で、「自分を異端である」と思い悩む人は、異端である人に対し寛容であり、結果、周囲の人の心を救います。

 異端でありマイノリティであることは、それだけ雄大で優しい人間になれる・・・「ミッドナイト・バス」はそんなことを優しく包み込むように、諭してくれるんす。

 自分を異常であると悩む人は、人生の深夜バスに乗っているような気になるかもしれません。

 社会に適合できないと、自分以外は皆、太陽の光の下を歩いているように見えるかもしれません。

 でも、本書を読めば、必ず夜は明けると信じることができますし、朝になるまで歩きつづける元気がわいてくることでしょう。

忘れない。初めての人、初めての夫。
私の人生が夜のとき、明け方まで運んでくれた人。

 この途轍もなく優しい物語は、読む人皆を明け方まで運んでくれます。

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こんな本を待っていた!中野信子「ヒトは『いじめ』をやめられない」は「いじめ」対策究極の実用本!

評価:★★★★★

いじめは脳に組み込まれた機能と言いました。
脳の機能は、それを完全に止めることはできませんし、倫理的に許されません。
しかし、脳をだますことや、その機能をコントロールすることは可能です。

(本文引用)
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 「こんな本を待っていた!」

 読みながら、何度そうつぶやいたことか。

 本書を語る前に、ちょっとダイエットの話をしますね。
 たとえば真剣にダイエットをしようと思えば、こんな行動にでませんか?

 ●お腹が空いている時にはコンビニやスーパーに行かない。
 ●毎日、体重を計る。
 ●低カロリーで満腹感のあるもの(コンニャク等)をゆっくり食べる。


等々。



 これはすべて、ダイエットのために脳を騙す・・・と言うか脳をコントロールしていることなんですよね。

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 ダイエットをする際に、「やせるために早急に対策をとること」などと指針を掲げても、なかなかやせられません。
 それよりも、「脳は快楽(=いかにも太りそうな、油脂と砂糖たっぷりの美味しい食べ物)を求める」という性質を理解し、甘くても低カロリーのものを食べるとか、食べたものを記録するとか、毎日体重を計るなどして脳をコントロールすれば、やせることができます。

 そう、これは、実は「いじめ」も同じこと。

 ヒトの脳は、異分子をかぎつけると排除するようにできています。
 
 それがすなわち「いじめ」です。

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 ならば、そんな脳の構造を知り、脳をコントロールすれば「いじめ」は減るわけです。
 「いじめをしようとする気を喪失させる」「いじめたら自分が損をするとわからせる」

 そのように対策をとれば、脳はまんまとだまされ、いじめは消失していくのです。

 本書では、その「脳内コントロール法」を具体的に伝授。
 しかもどれも、何ら難しい方法ではありません。

 もう本当に、あと10年でも20年でも早く、こんな本ができていたら、貴い命をどれだけ救うことができたでしょう・・・。

 中野信子さん、こんなに素晴らしい本を上梓してくださいまして、ありがとうございます!
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 著者・中野信子氏は脳科学者。
 脳のオーソリティーとして、とことん「脳が本来もつ機能」の観点から「いじめ」を分析していきます。

 中野氏によると、ヒトは社会性が非常に強いため、それを乱す分子を疎ましく思う性質があるとのこと。

 ちょっと非協力的だったり、ちょっと他の人より得をしているように見えたり、ちょっと勉強ができたり、ちょっと美人だったり等々、良いことも悪いことも含めて、少しでも周囲からはみ出していると、「グループを乱すもの」としていじめの標的になります。

 それは「いじめ」をした張本人も、同じこと。
 「いじめをした人」というはみ出し者、言ってみれば悪目立ちをしてしまったがために、いじめられる側にまわることもあるのです。

 そしてヒトは、集団になると理性が飛び、「いじめ」に対し恐ろしいほど快感を見出してくるとのこと。
  
 集団いじめが起きても、「我関せず」でいられる人はサイコパスであるとまで、著者は語ります。

 それほど「いじめ」という行為は、人間の脳にとってフツーのこと。

 お腹が空いたら食べたくなる、スマホをしていないとイライラする、ストレスがたまってお酒やタバコに手を伸ばす・・・。

 「いじめ」とは、それらの行動と変わらないぐらい、脳にプログラミングされていることなんです。

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 では「いじめ」は撲滅できないのか?

 そう思うかもしれませんが、中野氏が提言する「いじめ」撲滅法は、非常に簡単なもの。
 これは、病名がわかった途端に特効薬が処方され、症状が改善するのに似ています。

 身体の不調の原因がわからない時は治療方法がわからず苦労したけど、「これは●●病です」と診断がついた途端に、それに合った治療が施され、スルスルと快復に向かうことってありますよね。

 本書で提示される「いじめ」撲滅法、「いじめ」消失法は、まさに病の根源を明確にすることで、的確な治療を施したものと言えるのです。

 「いじめ」で辛い思いをしているのに、無理矢理学校に行っていませんか?
 「 『いじめ』で転校するなんて、逃げたみたいで恥ずかしい」なんて、思っていませんか?


 そして大人たちは、こう思っていませんか?

 「みんな一緒に仲良くしなきゃ!」
 「学校内を監視するなんて、みっともない」
 「いじめなんて人聞きが悪い。ここは『いじり』ということで済ませられないものか」

 このような思考は、全て「脳」の構造から考えて逆効果。
 いじめが辛いのなら学校を休めばいいですし、転校してもいいのです。
 みんな一緒に仲良くしなくてもいいんです。
 学校内に監視カメラをつけるのは、コスパ最高の「いじめ」対抗策です。みっともなくなんてありません。

 ぜひ本書で、医学的見地から「いじめ」を消失させる方法を学んでみてください。

 迷うことなく、「いじめ」から身を助ける行動をとることができますよ。

 (そういえば今思い出したんですけど、小学生の子どもの話を聞いていると、ものすごく頻繁に席替えをしてるようなんですよね。
 もしかすると、あれは「いじめ」対策なのかも。
 先生方、脳の構造から考えて色々努力してくださってるんですね。ありがとうございます!)


 ちなみに本書は、大人にも非常に有効。

 ママ友トラブルや職場でのハラスメントに巻き込まれない方法が、具体的に書かれています。
 人の脳を知れば、人間の「いじめスイッチ」を入れさせない行動をたくみにとることができるんです。
 これは参考になりますよ~。

 かつてなかった、途轍もなく実用的な「いじめ」対策本「ヒトは『いじめ』をやめられない」。
 
 今現在、いじめに悩んでいる人、人間関係のトラブルをできるだけ避けたいと思っている人。
 そして、学校や職場から「いじめ」をなくしたいと思っている人。

 あなたの生活に1滴でも「いじめ」の心配があるならば、読んで絶対損なし。

 「こんな本がほしかった!」

 と大きく膝を打ちますよ。

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映画「少女ファニーと運命の旅」原作!「ファニー 13歳の指揮官」ファニー・ベン=アミ

評価:★★★★★

「守護天使さん、おねがい。どうか助けて。今度こそ自由になれるように、わたしたちを守って。逃げるのはこれが本当に最後になるように・・・・・・」

(本文引用)
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 映画「少女ファニーと運命の旅」原作。

 朝日小学生新聞で薦められていたので、手に取りました。

 本書を読んで、まず湧き上がるのは戦争に対する怒りです。

 戦争は、弱い者が犠牲になります。

 社会の強者は、戦争を「国のため」と言うかもしれません。

 でもそんな強者の身勝手、勝者の論理でいちばん傷つくのは、いつでも一番守られるべき弱者なんです。



 本書の翻訳者、伏見操さんも「訳者あとがき」でこう語っています。 

戦争においてもっとも苦しむのは、戦争を起こした「国」ではなく、いつもいちばん弱い人たち-とくに子どもです。それは戦争に勝っても負けても変わりません。


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■「ファニー 13歳の指揮官」あらすじ



 ファニーはユダヤ人の少女。
 第二次世界大戦直前、ナチスがドイツを支配したと同時に、家族でフランスに逃げてきました。

 理由はもちろん、ユダヤ人迫害から逃れるためです。

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 しかし密告により、ファニー一家は警察に追われ、親子は引き裂かれます。

 ファニーは幼い妹2人と共に、子どもたちだけでスイスに逃げる計画に参加します。

 ところが途中で、リーダーの青年が逃亡。
 急きょファニーが、リーダーを任されることになります。

こうしてわたしは、スイスへ、そして自由へむかって逃げる。十一人の子どもの命をあずかることになったのだった。

 たった13歳で、大変な重責を担ったファニー。
 彼女たちに待ち受ける運命とは?
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■「ファニー 13歳の指揮官」感想



 本書を読むと、戦争とは差別とは、何と残酷なことかと胸を締めつけられます。

 ファニーら子どもたちは、戦争と差別により生命の危機にさらされます。

 少し声を出すだけで、憲兵に見つかるのではと恐怖に怯え、「今日が人生最後の日かもしれない」という思いで、ひたすら歩きつづけるファニーたち。

 文章からその姿を想像するだけで、「何で幼い子どもたちが、大人が勝手に始めたことで、こんな苦しみを味わわなければならないのだろう」と憤りを感じます。

 たとえばこのくだりからは、ファニーたちの並々ならぬストレスがうかがえます。

最後の食事・・・・・・それってどういう意味? ふたりの看護婦さんは何について話していたの? 最後の食事ってことは、わたしたちを殺すつもり? だから憲兵は昨日、あんなにものわかりがよかったの?
 わたしは窓という窓、壁という壁を調べ、どこかに割れ目やすき間がないかさがした。早くここから逃げなくちゃ。でも、どうやって? どうしたらいいの? 扉には鍵がかかり、銃を持った憲兵たちが見張っているというのに・・・・・・。

  「子どもの脳を傷つける親たち」にも書かれていましたが、大人の役割は、子どもが安心して過ごせる場を作ることです。

 子どもは心安らぐ生活を送ることで、愛情や優しさ、適切な判断力や社会性を身につけ、巣立っていきます。

 しかし戦争や差別は、子どもを絶え間ない恐怖に陥れます。

 戦争と差別は、子どもを守るべき大人たちが、寄ってたかって子どもを壊していくことなんです。

 この物語は、著者が体験した実際の出来事をつづったものです。

 よってエピローグでは、ファニーをはじめ妹たちのその後についても書かれています。

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 そこからは大きな悲しみも喜びもうかがえますが、戦争の悲惨さや理不尽さを決して忘れてはならないという熱意も、ヒシヒシと伝わってきます。

 戦争の酷さと虚しさを次代に伝えていくために、大人も子どもも読みたい名著です。

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子供の受動喫煙防止が「責務」に。村田陽平著「受動喫煙の環境学」は授業喫煙対策の必読書!

評価:★★★★★

「迷惑」という言葉は人間の主観に留まる言葉であるが、受動喫煙は、「迷惑」というレベルではなく、健康被害を生む「危険」なレベルのものである。
(本文引用)
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 今月5日、東京都議会で「子どもを受動喫煙から守る条例」が成立しました。

 条例では「18歳未満の子どもに受動喫煙をさせないよう務めることを、都民の『責務』」と規定。
 個人宅や車の中など私的な空間に立ち入った内容なので、十分な審議が必要とされていましたが、全国で初めて都道府県条例として定められました。
 
 ちなみに私が住んでいる市では、飲食店の受動喫煙防止対策が推進されています。
 よって、子供連れでレストラン等に行くと、店員さんは必ず禁煙席に誘導。


 
 わが家は誰もタバコを吸いませんし、私は大の嫌煙家なので、非常にありがたいです。
 愛煙家の方は、どう思っているのかわかりませんが・・・。

 ともあれ、今回の条例制定は「タバコのない社会」に向けて大きく前進したもの。

 2020年の東京五輪は「たばこのない五輪」を目指していますし、個人的にはこのまま「タバコのない社会」に真っすぐ突き進んでほしいなと思います。
 (それにしても、タバコを吸う人って本当に減りましたよね~。
 現在、成人男女の喫煙割合は2割を切っているとのこと。
 確実に、タバコのない国になってきていますね!)

そこで今回読んでみたのが、「受動喫煙の環境学 ~健康とタバコ社会のゆくえ~」

 第13回人文地理学会賞(一般図書部門)を受賞した本ですが、これは喫煙者も非喫煙者も超必読!

 「環境学」と聞くと、タバコが自然環境を破壊するようなイメージがありますが、ここで書くのはむしろ「心・人間関係の環境」。

 受動喫煙の有害性はもちろん、「タバコ産業は受動喫煙についてどう思っているのか」まで徹底究明。

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 あたかも非喫煙者に気を遣ってますよーと言わんばかりの、タバコ利権のレトリックまで暴いており、「だからタバコはなくならないのか!」と思わず膝を打ちます。

 たとえば、少し前に中吊り広告にあった「大人たばこ養成講座」。

 あれって、当時は「マナーを守ってタバコを吸うのが大人の愉しみ」みたいな感じで表現されていて、話題になりましたよね。

 でも、本書にも書かれていますが、あの広告は「タバコのススメ」とも言えるんですよね。

 よく考えたら「タバコそのものを吸わないのがいちばん」なのに、あたかもマナー良くタバコを吸うのがかっこいいかのように喧伝。

 今だったら炎上するところですが、当時はネットもSNSもなかった時代。

 世間はいつの間にか、「マナーよくタバコを楽しむ。これ、大人のたしなみ」みたいな意識を植え付けられてしまっていたんです。

 また本書では、タバコとセクシュアリティについても厳しく言及。
 特に「タバコと男性」を結びつける誘導策に、社会はまんまとはめられていたことがわかります。

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 本書を読むと、タバコに関するマインドコントロールの恐ろしさに驚愕。
 「これは、喫煙者と非喫煙者とが相容れないのも無理ないなあ」と、ガックリきました。

 そして何と言っても本書最大の魅力は、受動喫煙に悩む人の声がたっぷりと掲載されていることです。

職場で(喫煙室などで)吸って帰ってきた人が、近くに来てリラックスした顔で臭いを発すると腹が立ちます。

隣の人や後ろの席の人がタバコを吸って戻ってくると、その呼気だけで身体に反応が出ました。化学物質過敏症にもなったようです。

打ち合わせで飲食店へ行くときはきついです。とくに地方などへ行くと全然禁煙の店が探せないんです。受動喫煙症の診断をとったので、なるべく懇親会などには出ないようにはしていますが、なかなか避けにくいのが現実です。

駅でタバコを注意して刺された人や殴られた人がいますし、バス停でお母さんと子どもが殴られたニュースがありましたね。私は子どもといることが多いので、それはできないからいつも煙から逃げています。自転車のときはすぐに逃げますし、自動車のときは前野車が窓を開けて喫煙していたらすぐに窓を閉め切ります。

身体症状が出るようになってから、仲のよい幼なじみ(喫煙者)と会いづらくなりました。


 これは本書に載っている声の、ごく一部。
 他にも、自宅にタバコの臭いや煙が入ってきて困っている人や、親せきづきあいを辛く感じている人など、様々な声が聞かれます。

 受動喫煙は、喫煙者・非喫煙者含め、心も身体も確実にむしばんでいくのです。

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 こう書くと、ものすごく喫煙者を糾弾する内容に思えるかもしれませんが、本書自体は非常にフラット。
 喫煙者の立場もかんがみながら、より良い社会にしていくにはどうすれば良いかを、真摯に述べた内容となっています。

 受動喫煙防止に向けて、確実に一歩を踏み出した昨今。
 「今読まずにいつ読む!?」と言いたくなる、現代社会の必読書です。

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親の行動で本当に脳は変形する!「子どもの脳を傷つける親たち」友田明美

評価:★★★★★

「もし、あなたが生き延びることができたら、わたしが愛していたことを忘れないで」
(「あとがき」より)
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 「強烈なストレスを受けつづけると脳がしぼむ」ー以前、こう聞いたことがあります。

 私が高校生の時、歴史に残る凶悪事件が起こりました。

 遺体を解剖したところ、被害者の脳が委縮していたことが判明。

 長期間にわたる苛烈な暴行や、常軌を逸した屈辱を受け続けた結果、脳が変わってしまっていたのです。

 被害者の方の悔しさや悲しさ、そして遺族の方々の辛さを思うと・・・20年以上たった今でも、胸の中でそっと手をあわせます。

 ところでこの事件、他人事だと思いますか?



 さすがにたいていの人は、この事件の加害者のような行動はとらないでしょう。

 でももしかすると、私たち親も子供の脳をジワジワと委縮させているかもしれないのです。

 子どもへの暴力・体罰・性的虐待はもちろん、スマホに夢中で子どもの言葉を無視したり、帰ってきても顔も上げなかったり、子どもの目の前で配偶者を罵ったり、宿題のやり方を指図したり・・・その行動1つひとつが、子どもの脳を変形・萎縮させてしまうのです。

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 本書「子どもの脳を傷つける親たち」は、科学的側面から徹底的に「親の行動が子どもの脳を変形させる」ことを実証していきます。

 この本を読んでから、私は子どもへの接し方がかなり変わりました。

 別に優秀でなくてもいい。穏やかな気持ちで、大過なく人生を過ごしてくれれば・・・。

 子どもに対してはそれぐらい呑気に構えていましたが、実は親のちょっとした行動で、それすら難しくなってしまうんですね。

 本書を参考にして、せめて子どもの脳を変形させることだけはすまい、と心に誓いました。
 (手遅れでなければよいのですが)
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 本書の著者・友田明美さんは、福井大学子どものこころの発達研究センター教授。
 ご自身も二児の母親で、子育て上の失敗談なども交えながら、「親の言動と子どもの脳」について徹底分析・解説していきます。

 本書のキーワードは「マルトリートメント」
 聞き慣れない言葉ですが、日本語では「不適切な養育」という意味になります。

 このマルトリートメントの範囲は、報道されるような暴力や性的虐待等にはとどまりません。

 たとえば子どもは可愛がっていても、子どもの目の前で夫婦ゲンカをすること。
 配偶者に対し暴力・暴言を吐くこと。

 その他、子どもの恥じらいを大切にしなかったり(着替えを見られるのを嫌がるのを無視する等)、強度の近眼なのに眼鏡を買ってやらなかったり、病院に連れて行かなかったりするのもマルトリートメント。

 子どもの言葉を無視する、子どもが抱っこや手つなぎを求めても応えてやらない、帰宅しても顔も上げない、宿題のやり方を指示・命令する、兄弟姉妹間で比較する等々は、全てマルトリートメントになるのです。

 マルトリートメントを受け続けた子どもは、学校で乱暴を働いたり、物忘れがひどかったり、おもらしをしてしまったりと問題行動が現れます。

 その他、体調不良を頻繁に訴えたり、特定の場やグループ行動を極度に嫌がったりするなど、様々な行動が現れます。

 全てが全てマルトリートメントのせいというわけではありません。

 しかし、マルトリートメントが一因になっていることが多いのは確かなようです。

 本書では、その説を医学的見地から分析。

 たとえば両親間のDVを長期間目撃してきた子どもは、脳の視覚野が委縮します。

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 人間の体は自分で自分を守ろうとするので、不快な場面を見せられ続けることで、視覚をつかさどる部分が縮んでしまうのです。

 また暴言を浴び続けると、聴覚野が逆に膨大するとのこと。

 脳の神経伝達は、成長とともに剪定され、効率的な形になっていきます。

 しかし暴言を繰り返し聞かされることで、その剪定がうまくいかなくなり、脳神経は雑木林状態に。
 結果、心因性難聴などを引き起こし、情緒不安定や人間関係の不和などにつながっていくそうです。

 保護者の行動ひとつで、ここまで子どもたちの脳は変形し、人生に大きな瑕疵を与えてしまうとは・・・読みながら心の底から戦慄しました。

 そういえば、虐待は連鎖するといいますよね。
 脳が変形してしまった子どもが成長し、親になるのですから、連鎖するのも無理はないのです。

 とはいえ、子育てをしているとつい、あれこれ口を出してしまったり、イライラして心にもない言葉を吐いてしまったりしますよね。

 私もしばしば「ああ、何であの時あんなことを言ってしまったのか。あの時にもう一度戻ってやり直したい!」と反省・後悔してしまいます。

 もしも「私は親として大丈夫だろうか?」と少しでも思ったら、ぜひ本書を読んでみてください。

 そして「どうすれば子どもの脳を変形させることなく、楽しく穏やかに子育てができるのか」悩んでしまったら、特に本書終盤をじっくり読み込んでみてください。 

子どもは大人のミニチュア版ではない-。

  その言葉をカギに、「イライラしない子育ての考え方」が書かれています。
 医学的見地からしっかりと書かれているので、心から納得できますよ。 

子どもに必要なのは、安心して成長できる場所です。それを与えることができるのは、われわれ大人だけです。

 子どもが大きくなるのはあっという間。
 お互い、子どもが安心して成長できる場所をつくれるよう、がんばっていきましょう!
 私も未熟ながら、本書をバイブルにしてがんばります。

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 ちなみに冒頭に挙げた引用部分は、ある災害に遭った女性が遺した言葉。
 このメッセージを受け取った赤ちゃんは、今9歳になっていると思いますが、母親を失っても健やかに成長していることでしょう。

 彼女の遺したメッセージは、「適切な養育」を凝縮させたものといえるでしょう。

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運転免許の教習所に通っている方は絶対読むべき!ロック好きも必読!「本日も教官なり」(小野寺史宜)感想

評価:★★★★★

「社会に出たら、追いつめられることは何度もあるよ。予想外のことも起きる。そうなっても対応できるように動かなきゃいけない。運転と同じだよ。だろう運転じゃダメなんだ。かもしれない運転をしないと」
(本文引用)
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 日経新聞「目利きが選ぶ今週の3冊」で絶賛されていたので購入。
 いやもう、これ、最高!です。

 読みながら、「心に涼風が吹き抜けるって、まさにこんな感覚だな~」と再認識。

 私の人生のなかで、「元気が出る小説 ベスト3」には軽く入る一冊ですね。

 今現在、「自分に勇気を与えてほしい」「背中を押してほしい」「人生に喝を入れてほしい」とお考えの方は、読めば全て叶いますよ。



 そして何より、この小説を読むべき人は「運転免許の教習所に通っている人」。

 車を運転するうえで大切なものが、この小説にはぜーんぶ詰まっています。
 本書を読んだ後に教習所に行ってみてください。

 「あれ?君、運転うまくなったね」
 「今日の運転、すごく良かったよ」

 と教官に言われること間違いなし。

 運転初心者の方も、本書で「交通事故に遭わないメソッド」を楽しみ学ぶことができます。

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 人生にも運転免許にも効く「本日も教官なり」。

 久しぶりに「読んで損なし!」と皆にオススメできる小説と出会えました。
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■「本日も教官なり」あらすじ



 主人公の益子豊士は、運転免許教習所の教官。

 別れた妻・美鈴との間に、17歳の娘・美月がいます。

 ある日、豊士は美鈴から連絡を受けます。

 その内容は「美月が妊娠した」というもの。

 豊士は実の父親として、何とか美月を支えたいと必死になりますが、どこか空回り。

 老若男女が集まる教習生と触れ合いながら、豊士は家族を救う術を模索しますが・・・?
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■「本日も教官なり」感想



 人生で、信頼できる恩師や友だちって一人はいますよね。
 積極的に何かしてくれるというわけではないんだけど、嫌なこと、辛かったこと、嬉しかったことは真っ先にこの人に話したい・・・そんな人が一人はいるのではないでしょうか。

 「本日も教官なり」は、そんな恩師・親友のような一冊。

 特に豊士が教習生に話す言葉は、何気ないようで温かさに満ちており、読んでいるだけで心の錆が取れるような気がします。

 初孫を送迎するために必死で通う高齢女性、サッカーや卒論で忙しく教習所に通えなかったにも関わらず、無理やり免許を取ろうとする大学生、人気教官ともしかすると・・・?のうら若き女性。

 教習生は、教官が厳しいとつい「この人は私の敵!?」などと逆恨みをしがち。

 筋違いもいいとこなのですが、それを豊士は常にうまくかわし、教習生を心から励まします。

「おれらは敵じゃない。味方ですよ」

 と。

 たとえば、なかなか運転がうまくならない高齢女性に、豊士は人生全般を考え、ある提案をします。
 それは「教習所の教官がそんなこと言っていいの!?」と目をむくような内容で、現実にはあり得ないかもしれません。

 でもこれはフィクション。「ありえない」アドバイスをしたっていいのです。
 車や運転の素晴らしさを知り、それを伝える役目のある教官は、本当は豊士のように思っているかもしれません。

 今、自分は何のために免許を取っているのか。
 免許を取ったら、、どんな生活を送りたいのか。
 人生でいちばん大切なことは、何なのか。

 現在、教習所に通っている方は、ぜひ豊士の言葉に耳を傾けてみてください。

 免許をとった後、豊士の言葉を思い返せば、心底楽しい車ライフを送ることができますよ。

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 また、サッカーと卒論で忙しく、最後の最後で無茶を言う学生との会話も必読!

 教習所なら、いざとなったら教官が補助ブレーキを踏んでくれます。
 でも免許をとったら、教官も補助ブレーキもなし。
 全て自分で責任を引き受けなければなりません。

 さて、学生にその覚悟はできているのか。

 運転免許とは、そのまま安全に社会生活を送る免許といえるのかもしれません。
 (「運転免許のない人は安全に社会生活を送る資格がない」という意味ではありませんよ、念のため)

 自分の人生も他人の人生も大切にできない人は、免許を取る資格はない。
 自分も他人も危険にさらすような人間には、ハンコを押すことなどできない。

 豊士の姿勢からは、そんな真の優しさがうかがえます。

 だから豊士は信用できるし、この小説も信用できる。

 本書が「何かあったらこの人に相談したい、伝えたいと思える親友みたいな存在」と言ったのは、そういうわけなんです。

 随所にさしはさまれるロックの名曲も、スパイスとして効果的。

 運転免許教習所に通っている方と、ロック好きの方。

 そして、人生に迷いを感じている人や何となく元気の出ない人に、本書は超×100オススメです!

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カズオ・イシグロさんがノーベル文学賞受賞!おすすめは福岡伸一さんとの対談。

「人生、楽しまなくっちゃ。夕方が一日でいちばんいい時間なんだ。脚を伸ばして、のんびりするのさ。みんなにも尋ねてごらんよ。夕方が一日でいちばんいい時間だって言うよ。」
(「日の名残り」より引用)
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 カズオ・イシグロさんがノーベル文学賞を受賞されました!

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 言われてみればなるほど納得。

 今までブッカー賞など栄誉ある賞を受賞されていたので、何となく忘れていたのですが、受賞されて当然の方ですよね。

 本当におめでとうございます。

(そういえば去年はボブ・ディランでしたね。
 今年はやはり、容易に連絡がとれそうな方にしたのかな?なんて思ったりして・・・)


 このブログでもカズオ・イシグロさんについては触れてきましたが、個人的にかなりオススメなのは、「動的平衡ダイアローグ」(※レビューはこちら)。

 


 あ、これはカズオ・イシグロさんの著作ではなく、「あの」(なぜか「あの」をつけてしまう)福岡伸一さんとの対談。

 「わたしを離さないで」を中心に、カズオ・イシグロさんの小説家としての軌跡や、何が「作家・カズオ・イシグロをつくったか」などについて語っています。

 こんなことを言うのも非常におこがましいですが、フランクにお話しされるカズオ・イシグロさんの言葉を読み、何だかグンと「文豪・カズオ・イシグロ」を身近に感じました。

 「カズオ・イシグロとはどんな人物なのか、どんな作家なのか」を知るうえでは、素晴らしい内容だと思います。

 カズオ・イシグロさんの小説といえば、やはり「日の名残り」でしょうか。(※レビューはこちら

 


 非常に滋味豊かな小説で、人間としての慎ましさ、奥ゆかしさ、深さ、優しさ、厳しさなどが全て詰め込まれているような美しい作品です。
 映画とともに、とーってもオススメです。

 今回の受賞で、ますますカズオ・イシグロさんのことを知りたい、いえ、知らなくちゃ!と思った秋の夜長。

 読もうと思いつつ、先延ばしになっていた「忘れられた巨人」を読もうとソッと手を伸ばしました。



 ちなみに冒頭に挙げたフレーズは、私がしばしば心の中で唱える言葉。
 カズオ・イシグロさんの小説のなかで・・・いえ、他の作家の作品も含む全小説のなかで、最も好きな言葉です。

「人生、楽しまなくっちゃ。夕方が一日でいちばんいい時間なんだ。脚を伸ばして、のんびりするのさ。みんなにも尋ねてごらんよ。夕方が一日でいちばんいい時間だって言うよ。」

 何度読んでも、心にしみます。
プロフィール

アコチム

Author:アコチム
仕事・家事・育児の合間に文字を楽しむ、兼業主婦の備忘録です。
本の評価は以下のとおり(2015年10月~)
★★★★★=読むと一生幸せでいられます。
★★★★☆=読むと1年間幸せでいられます。
★★★☆☆=読むと1週間幸せでいられます。
★★☆☆☆=これ以下の本は載せません。

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